「もしも実家を相続することになったら、何から手をつけたらよいのかわからない」と思っている方も多いのではないでしょうか。
実家の相続には、必要な手続きや知っておくべき注意点があります。
今回の記事では、名義変更などの手続きのほか、相続した実家の活用方法についても解説します。
目次
【実家を相続する前に】知っておくべき4つのポイント

実家を相続する前に知っておくべき4つのポイントを、詳しく解説します。
相続税が発生する場合は10か月以内に納付が必要
相続税の申告は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
申告期限を過ぎてしまうと、ペナルティとして無申告加算税や延滞税が課されてしまうため、注意が必要です。
相続税の支払いのため実家を売却する可能性もある
相続税は、現金での一括払いです。
仮に納付する相続税分の現金が用意できない場合は、実家を売却した額を現金化して支払う方法もあります。
相続した不動産を売却する際は、相続税の申告期限内に相続登記や売買契約を完了させる必要があるため、早めの準備が大切です。
実家を相続する場合は相続人の同意が必要
実家を相続して名義変更する場合は、相続人の同意が必要です。
名義変更する際には遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する必要があります。
遺産の分割方法によっては現金が必要な場合もある
遺産の分割方法には、現物分割と代償分割、換価分割、共有分割の4つがありますが、代償分割の際は現金が必要です。
代償分割を行う場合、不動産を相続した相続人は、他の相続人に対して代償金を現金で支払う必要があります。
実家を相続する手続きの流れ

以下では、実家を相続する際に注意すべき期限と、具体的な手続き方法を詳しく解説します。
実家の相続では3つの期限に注意!
実家を相続する際の手続きには、それぞれ期限があります。
期限が過ぎてしまうと、申告が無効になったりペナルティが課せられたりすることがあるため、注意しましょう。
【相続開始から3か月以内】相続放棄
相続放棄をする際は、相続開始から3か月以内に手続きを完了させる必要があります。
期限を過ぎてしまうと相続放棄が困難になってしまうため、期限を過ぎてしまいそうな場合は、家庭裁判所に相続放棄の期間伸長の申立を行いましょう。
【相続開始から4か月以内】準確定申告
準確定申告を相続開始から4か月以内に行う必要があります。
準確定申告とは、亡くなった被相続人の所得に対して行われる確定申告です。
不動産所得が20万円以上ある場合や、2か所以上の会社から給料を取得している場合、事業所得が20万円を超えている場合などは準確定申告を行う必要があります。
【相続開始を知った日の翌日から10か月以内】相続税の申告・納付
相続税の申告と納付は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に完了しなければなりません。
先述の通り、期限を過ぎてしまうとペナルティが課せられてしまうため、早めの手続きを心がけることが大切です。
実家を相続するときに必要な3つの手続き
実家を相続するときに必要な3つの手続きについて、詳しく解説します。
【ステップ1】遺言書を確認する
まずは遺言書の有無を確認しましょう。
被相続人が遺言書を残している場合は、その内容に従って遺産を分ける必要があります。
【ステップ2】法定相続人と遺産分割協議を行う
次に、法定相続人と遺産分割協議を行い、協議した結果を遺産分割協議書にまとめます。
遺産分割協議書は自分で作成もできますが、内容に誤りがあるとトラブルにつながる恐れがあるため、できる限り専門家に作成依頼をするのがおすすめです。
【ステップ3】不動産の名義変更をする
不動産を相続する人が決まったら、すみやかに名義変更(相続登記)を行いましょう。
2024年からは相続登記が義務化されます。
正当な理由なく相続登記の申請をしなかった場合は、10万円以下の罰則の対象となるため、必ず手続きを行いましょう。
不動産相続の登記について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
実家を相続するときの注意点

実家を相続する際は、以下で紹介する5つの点に注意しましょう。
【必読】やってはいけない3つのこと
相続は手続き方法を間違えると、トラブルにつながる恐れがあります。
そのような事態を招かないためにも、以下ではやってはいけない3つのことを紹介します。
「そのまま放置」はNG
相続した実家をそのまま放置するのは避けましょう。
相続した実家に誰も住んでいない場合でも、相続人は固定資産税や都市計画税を支払い続けなければなりません。
また、空き家として放置していた不動産が「特定空家等」に指定された場合は、固定資産税が最大6倍、都市計画税が最大3倍に跳ね上がる可能性があります。
空き家を放置してもメリットがないため、誰も住む予定がない場合や買い手が見つからない場合などは、相続放棄を検討するのがおすすめです。
「とりあえず相続」は危険!3か月で慎重に判断しよう
実家の相続放棄がもったいないからといって、とりあえず相続するのは危険です。
実家を相続すると、買い手が見つからずに空き家になったり、余計な費用がかかったりする可能性があります。
不動産の相続については、相続放棄の期限である3か月の間で、慎重に考えることをおすすめします。
共有名義はトラブルのもと
共有名義とは、1つの不動産を複数人の名前で登記することです。
たとえば共有名義にすると、不動産の活用に名義人全員の同意が必要であったり、名義人の1人が亡くなった場合の相続手続きが複雑化したりなど、トラブルにつながる可能性があります。
そのため、できる限り共有名義は避けるのが無難です。
家と他の財産を別々に計算することはできない!
遺産を分割する際は、現金や不動産などに区別はなく、すべての財産を合計します。
家と他の財産を別々に計算することはできないため、注意しましょう。
たとえば、3,000万円の不動産と1,000万円の預金を兄弟2人で分ける場合、相続遺産はそれぞれの数値を足した4,000万円です。
2人は2,000万円ずつ相続することになるため、1,000万円の預金を相続した側が残りの1,000万円を要求した際には、相応の現金を支払う必要があります。
誰の名義にするかは慎重に判断する
相続した実家を誰の名義にするかは、慎重に判断しましょう。
たとえば、父親が死亡して母親と子どもが相続人となる場合、何も考えず母親の名義にしてしまうと、以下のような問題が発生する可能性があります。
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いったん名義変更してしまうと簡単に変更できないため、不動産の名義変更は慎重に行う必要があります。
自身で判断がつかない場合は、専門家へ相談しましょう。
相続人が決まったら名義変更は早急に行う
先述した通り、2024年から不動産の名義変更(相続登記)が義務化されます。
相続登記は相続が発生してから3年以内に行う必要があり、所有者の氏名・住所が変更になった場合は変更された日から2年以内に手続きをしなければなりません。
住む予定がないなら早めに売却も検討する
相続した実家に住む予定がない場合は、早めの売却を検討しましょう。
売買契約が成立した際は、仲介手数料や譲渡所得課税、印紙税などを支払う必要がありますが、相続してから3年以内であればさまざまな控除や特例が受けられます。
実家の名義変更の手続きについて
実家を相続する際には、相続登記(不動産の名義変更手続き)が必要です。
相続登記は2024年に義務化されるため、理解を深めておくことをおすすめします。
なお、相続登記は相続税の申告の前に行うのがおすすめですが、先述のように相続税の申告には10か月の期限があるため、早めに手続きを行いましょう。
相続登記について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【メリット・デメリットを比較検討しよう】実家を相続後はどう活用する?

実家を相続したあとの活用方法と、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
自分で住む
相続した実家に住むメリットは、家賃・ローンがかからないことや小規模宅地等の特例が使える可能性があることです。
相続した実家が「小規模宅地等の特例」の要件を満たしている場合は、相続税を最大80%減額させることができます。
一方で、相続した実家にそのまま住むと、資産価値が下落したり相続の際にトラブルが発生したりするリスクがあります。
建物は年数の経過とともに価値が下落しやすくなるため、将来売却を考えている場合は注意が必要です。
他人に貸す
相続した実家を他人に貸すという選択肢もあります。
相続した実家を他人に貸すメリットは、空き家として放置されるリスクが減少したり家賃収入が得られたりすることです。
また、他人に貸すことで掃除や管理の手間が省け、資産価値の維持につながるでしょう。
一方で、他人に実家を貸す場合には、リフォームにお金がかかったり手続きに手間がかかったりするなどのデメリットもあります。
物件の条件によっては借り手がなかなか見つからない場合もあるため、住宅に対するニーズと、かかるコストを考慮して判断することが大切です。
更地にして土地活用する
相続した実家を一度更地にし、アパート経営や駐車場経営、貸店舗などの土地活用をする選択肢もあります。
土地活用するメリットは、実家を貸すよりも大きな収入を得られる可能性があることや、節税効果が期待できることです。
特に、アパート経営や貸店舗として土地活用する場合は、「住宅用地の特例」によって固定資産税や都市計画税を減額できます。
一方で、土地活用するデメリットは初期費用がかかることです。
実家を取り壊して新しく建物を建てる必要があるため、まとまった初期費用が必要となるでしょう。
実家を相続した場合の相続税の計算方法

以下では、実家を相続した場合の相続税の計算方法を詳しく解説します。
【注意】家の相続税は個別に計算しない
家の相続税のみを個別に計算はできません。
相続税は、相続するすべての財産を合計し、そこから相続税率を当てはめて算出します。
相続税の計算方法
相続税の計算方法の流れは、以下の通りです。
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このように、法定相続分で遺産相続した場合の相続税額を算出してから合算し、各相続人に分配するという手順を踏みます。
課税遺産総額は、土地や預貯金などの相続財産から債務(借金、未払金)を差し引いた正味財産額から、基礎控除額を引いて算出します。
相続税の計算方法や申告について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
実家の相続税評価額を計算する方法
実家を相続した場合の相続税を計算するためには、まず実家の相続税評価額を算出する必要があります。
戸建て、マンションどちらであっても、建物の相続税評価額は【固定資産税評価額×1.0】で算出します。
市町村から毎年送られてくる「固定資産税課税証明書」の「価格」額が固定資産税評価です。
たとえば、価格が「3,000万円」と記載されていた場合の相続税評価額は「3,000万円×1.0=3,000万円」と計算できます。
実家の相続税を減らす方法
実家の土地や不動産にかかる相続税を減らすためには、特例や控除を活用しましょう。
評価額が最大80%減額される小規模宅地等の特例をはじめ、贈与税額控除、配偶者控除、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除などが挙げられます。
土地や不動産の相続税評価額の計算方法や節税対策について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
相続した実家を売却する場合の注意点

相続した実家を売却する際は、以下4つの点に注意しましょう。
【大前提】共有物件の売却には、共有者全員の同意が必要
相続した実家が共有物件である場合、売却する際には共有者全員の同意が必要です。
反対する共有者がいると売却手続きは進められないため、不動産の活用方法について共有者全員でよく話し合うようにしましょう。
おさえておきたい2つのポイント
相続した実家を売却する際は、以下で紹介する2つのポイントをおさえましょう。
売却側の代表者を決める
共有物件を売却する際は、不動産の査定・売却などの手続きを進める代表者を決めましょう。
代表者を1人決めておくことで、不動産会社や司法書士とのやり取りや、仲介手数料や印紙代の支払いなどをスムーズに行えます。
売却最低価格を決めておく
相続した実家を売却する際は、売却最低価格を決めておくことをおすすめします。
特に共有物件の場合、あまりにも安い値段で売り払ってしまうと、他の共有者とのトラブルにつながりかねません。
トラブルにならないためにも、複数の不動産会社で査定額を取得し、その額をもとに最低売却価格を決めましょう。
売却方法
不動産の売却方法にも注意が必要です。
建物の老朽化が進んでいる場合は、売却後に解体費用がかかるため、売却物件としての評価が低くなる可能性があります。
だからといって、売却前に建物を取り壊してしまうと、相続税の小規模宅地の特例が利用できなくなってしまうほか、固定資産税の額も高くなってしまうため、注意が必要です。
したがって、売却方法を決める際は、建物を残した場合と取り壊した場合のコストを照らし合わせて比較検討するようにしましょう。
売却のタイミング
相続した不動産を相続税申告期限から3年以内に売却すると、譲渡所得税を安くできます。
また、要件を満たしている場合は、譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例「3,000万円特別控除」を使用することが可能です。
3,000万円特別控除は、相続日から3年を経過する年の年末まで、かつ2023年末までに申告することで適用可能となるため、3年以内を目処に売却を検討しましょう。
【放置は絶対NG】相続した実家を空き家として放置するとどうなる?

以下では、空き家を放置するリスクやデメリットについて詳しく解説します。
相続した実家を空き家として放置するリスク
相続した実家を空き家として放置する主なリスクは以下の2つです。
近隣に悪影響を与えるリスク
実家を空き家として放置すると、害虫や悪臭が発生し、近隣に悪影響を与える可能性があります。
地域の景観悪化のほか、犯罪の誘発につながることもあるため、定期的なメンテナンスが必要です。
建物価値を下げるリスク
実家を空き家として放置すると、建物価値を下げるリスクがあります。
管理が行き届いていない空き家は経年劣化が進みやすく、状態が悪くなってから物件を売却に出すと、多額の修繕費を負担しなければなりません。
そのような事態を避けるためにも、不動産の相続方法や活用方法について事前によく考えるようにしましょう。
空き家特別措置法と特定空き家
2015年に「空家等対策特別措置法」が施行され、倒壊や犯罪の現場となるリスクが高い空き家を「特定空家」に指定することが可能になりました。
この法律は、周辺の生活環境の保全を図るために制定されたもので、特定空き家に指定されてしまうと、さまざまなデメリットが生じます。
特定空き家に指定された場合のデメリット
空き家が特定空き家に指定されてしまうと、「住宅用地の特例措置」の対象から除外されます。
これにより、固定資産税の優遇措置が適用不可になるため、固定資産税額が最大6倍となる可能性があるのです。
さらに、自治体からの命令に応じず違反になった場合は50万円以下の過料が課せられてしまうため、空き家は放置しないようにしましょう。
実家の相続は兄弟姉妹のトラブルになりやすい!

以下では、トラブルが起こりやすい理由とトラブルにならないための対策方法を解説します。
なぜトラブルが起こりやすいのか
不動産の相続は、金銭に比べると価値がわかりにくいうえに分割が難しく、トラブルが発生しやすくなります。
名義変更についても、相続人の中に反対者がいると話がスムーズに進まないため、意見がまとまらずに時間だけが過ぎてしまうことも考えられるでしょう。
トラブルにならないためには?
不動産相続でトラブルにならないためには、親になるべく遺言書を残してもらうことや、不動産の分割方法について一人ひとりが正しく理解することが大切です。
特に、共有分割を選択してしまうと、さらにトラブルが発生してしまうことも考えられることから、分割方法については慎重に話し合いましょう。
兄弟で実家を公平に相続する方法
兄弟で実家を公平に相続する方法は以下の2つです。
実家をお金に変えて相続
実家を売却してお金に変えてから分割(換価分割)すると、不公平感が解消されます。
しかし、建物の状態によってはそもそも売却できないこともあるため、注意が必要です。
実家を売却せずに相続
実家を売却せずに相続する場合は、特定の相続人が不動産を相続し、相続した人が他の相続人に対して代償金を支払う「代償分割」がおすすめです。
実家を手放す必要がなく、話も比較的スムーズに進みます。
相続した実家をリフォームする際に知っておきたいこと

相続した実家をリフォームする際は、以下の5点をおさえましょう。
相続した実家をリフォームする前に考えたいこと
相続した実家をリフォームする前は、売却や人に貸すことも視野に入れましょう。
リフォームを行うには高額な費用や手間がかかるうえ、不動産は所有しているだけでも「固定資産税」や「都市計画税」の納税義務が発生します。
所有し続けると費用が膨らむ可能性があるため、リフォーム前に一度、そのまま売却した場合の査定額やニーズについて不動産屋に相談してみるのがおすすめです。
リフォームのメリット
相続した実家をリフォームするメリットは、買い手が見つかりやすくなったり賃貸物件として収益化が図れたりする可能性があることです。
リフォームによって見た目をきれいにすることで価値が上がり、ニーズが高まります。
リフォームのデメリット
リフォームのデメリットは、売却・賃貸の際にリフォームが逆効果になる可能性があることです。
リフォーム費用を売却価格や賃料に上乗せすると、買い手や借り手が見つかりにくくなる場合もあります。
リフォーム費用の相場
リフォームは基本的にオーダーメイドとなるため、決まった値段はありません。
費用は工事の内容や業者によって異なるため、複数の業者から見積もりを取りましょう。
相続した実家をリフォームする際の注意点
相続した実家をリフォームする前に、必ず名義変更を済ませておきましょう。
名義変更をしないままリフォームを行なってしまうと贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。
実家の相続についてのご相談は林商会にお任せください
これまで実家の相続について説明していきました。
相続した財産に実家が含まれる場合は、分割方法や活用方法についてトラブルになりがちです。
また、相続した実家にかかる相続税を計算する際には専門知識が必要なため、プロに依頼したほうが確実かつ安心です。
相続の専門家集団である林商会では、相続に精通した税理士・弁護士・司法書士などの専門家が在籍しております。
一人ひとりのお悩みに寄り添った解決策をご提案しますので、まずは無料相談・無料お問い合わせから、お気軽にご連絡ください。
まとめ
実家を相続した場合は、名義変更が必要です。
2024年からは名義変更が義務化され、違反するとペナルティが課せられてしまうため、注意しましょう。
相続が発生した実家の相続方法や有効な活用方法などに迷っている場合は、ぜひ一度林商会にご相談ください。