孤独死は一人暮らしの孤立した高齢者がなるもの、とイメージする人が多いでしょう。
しかし高齢者以外にも、現役世代と言われる40代・50代でも孤独死は多く発生しています。
年齢などに関係なく、孤独死は今もどこかで起きているのです。
そこで日々、特殊清掃や遺品整理を行う我々が現場を通して感じた孤独死の現状をご紹介します。
この記事を読んでいただき、少しでも多くの人に孤独死は他人事ではないことを知って頂けたら幸いです。
目次
孤独死時の平均年齢は『約61歳』

現役世代の孤独死は全体の4割
日本の平均寿命は84歳だとされていますが、孤独死での死亡時平均年齢は61歳と、その差は20歳以上。
更に、現役世代とされる50代以下はその内の40%を占めます。
また、高齢者とされる65歳に満たず亡くなる人の割合は50%を超えていることから、孤独死とは高齢者だけの問題ではないことを表しています。
若年化している孤独死
孤独死で亡くなった人の数は、40代以下の若年層が占める割合が徐々に上昇していると言われていますが、その理由の一つが「孤立する若年層の増加」です。
それは、核家族化が進んだ事に加え、単独世帯の増加が原因だと考えられます。
近年では、近所付き合いの希薄化やSNS普及による現実社会での人間関係の希薄化、リモートワークの推進などから、若者であっても孤立することは避けることのできない問題となっています。

上記は世帯構成の推移を表したもので、2040年には総世帯の内およそ4割が単独世帯になると予想されています。
孤独死の防止策として、福祉的なサービスや地域の見守りサポートが実施されていますが、いずれも独居老人を対象としたものであり、現役世代や若年層を対象としたケアも必要だという認識が広まりつつあります。
弊社で扱った40~50代の男性の孤独死事例
4年ほど前に依頼を受け、特殊清掃を行った40~50代の男性の孤独死事例をご紹介します。
社会から孤立していた男性

今回亡くなった男性は、小さなマンションに1人で暮らしており、死後1週間が経った頃に遺体が発見されました。
孤独死の現場となった男性の居室は、玄関を入ると左手にトイレ・キッチンと続き、奥に居室のある一人暮らしに多い典型的な1Kの間取り。
人間の体は死後、死後硬直を経て徐々に腐敗し始めます。
そして死後2~4日で血液や糞便を含む体液が漏出し始め、内臓の腐敗から生じる腐敗ガスが体外へと漏出することで「死臭」といわれる何とも耐え難い異臭が発生します。
その死臭を嗅ぎつけたハエが何処からともなく室内に侵入し、居室奥にあるベランダへと通じる2畳分程のガラス戸はハエでびっしりと覆いつくされていました。
我々が室内に入った際、昼間にも関わらずカーテンを締め切ったように室内が薄暗く、不気味な光景だったことを鮮明に覚えています。
外部との繋がりを遮断するかのように、常に締め切られた室内で男性は独りで亡くなっていたのです。
男性は生前、周囲との交流がほとんど無かったようで、彼を詳しく知る人はほとんどおらず、近隣住民ですら男性が亡くなったことには気付かなかったといいます。
そんな男性には唯一の家族に兄弟がいましたが、兄弟仲が良好では無かったようで我々が現場でお会いした際もどこか他人事のようだったことが印象的でした。
発見は死後1週間:自宅トイレで発作か
男性の遺体が発見されたのは死後1週間~2週間が経った頃。
我々は警察による遺体搬出が完了した後に現場に入るため、男性の死後2週間がたったころに現場へ入りました。
男性の死因は、心臓発作や心筋梗塞なのか詳しくは不明ですが、体調が激変したことによる突然死のようなものだったとか。
おそらく男性は、トイレで体調の異変を感じたのでしょう。
咄嗟にすぐそばにある玄関を目指し、外へ助けを呼びに出ることを試みましたが、途中で息絶えたようです。
トイレのドア付近には、玄関を向いて倒れる男性の遺体の影が、一週間の時をかけて黒々とした体液となり、その場に残っていました。
この男性のように、何らかの発作が原因となって亡くなる孤独死では、玄関付近で息絶えた事例や、外を目指し這いつくばった形跡が残る事例が多く見られます。
この男性は生前に近所付き合いが全く無くとも、本能的に他者への助けを求めるほどの苦しみだったのでしょう。
彼の安否を気遣ったのはコンビニ店員だけだった
男性には生前、毎日のように通っていたコンビニがありました。
よく、スーパーやコンビニのレジで店員と世間話をする年配者を見かけますが、きっと彼もそうだったのでしょう。
近所付き合いや家族のなかった彼は、コンビニでしか人と関わる機会がなかったのかもしれません。
しかし毎日のように訪れていたコンビニに、この男性は突然姿を現さなくなったのです。
それを不審に思った店員が警察へ通報したことで彼の遺体は発見されました。
おそらく、このコンビニ店員の機転がなければ、遺体が発見されるまで更に多くの時間を要したはずです。
社会からの孤立を痛感した今回の事例でしたが、誰しも1人は安否を気遣う人がいるのだと感じた事例でした。
孤独死の事例について詳しくはこちらの記事をお読みください。
▼特殊清掃員がみた孤独死の事例とは
40~50代の独身男性は孤立しやすい

40代を超えると周りとの接点が減り孤立が加速

上記は、「家族以外との交流がない人」の割合を国際比較したものです。
日本は諸外国と比較し、他者との関わりのない“社会的孤立”した人が群を抜いて多いことがわかります。
また、日本での生涯未婚率は1990年には男性で5.6%、女性で4.3%の割合だったものが、2015年には男性で23.4、女性で14.1%と大きく上昇しており、男性の約4人に1人は生涯未婚だということになります。

上記の図では、生涯未婚率は2040年には男性が約30%にまで増加すると予測されています。
この2点を整理すると、家族(主に親)以外の交流を持たない未婚者は徐々に増加傾向にあるということになります。
更に、40代・50代ともなれば親は高齢になっている場合がほとんどで、両親との死別を経験することも増える年代。
唯一交流のあった両親との死別は、更に孤立を加速させる要因となります。
また一般的には、この年代の男女であれば結婚し子育ても少し落ち着く年代であると考える人が多いでしょう。
40代・50代の人なら、「休日は家族で過ごす」といった人が大半だと考えられます。
しかし、現代の日本では離婚率も上昇傾向にあり、離婚が要因となって孤立へと陥ることも多いのです。
交流あっても孤独死の危険性あり
孤独死に陥る人というのは「社会的に孤立した人」のみだと考える人が多いかもしれません。
しかし、これは我々が実際に孤独死のあった現場に行って感じたことなのですが、社会との交流があるが故にストレスからセルフネグレクト、そして孤独死へと陥る人も多いのです。

引用:内閣府
上記は、「ストレスをどの程度感じているか」を調査したものです。
その中で「ストレスを感じている」人の割合が40代で最も高くなっていることがわかります。
実際に我々が特殊清掃に向かった現場で印象的だった事例があります。
数年前、50代前後だった男性が亡くなった住居は、典型的なゴミ屋敷でした。
足の踏み場もないほど積み上げられたゴミの山と、いつ使用したのかわからないキッチンに、掃除など一度もされた形跡の無い水回り…。
しかし、ふと目についた先には綺麗に磨かれた革靴ときちんとアイロンがけされたシャツやスーツがありました。
男性は定職に就き、おそらく社内でもそこそこの役職についていたのでしょう。
彼の近隣での評判は良く、「礼儀正しく真面目な男性だった」との声をよく耳にしました。
彼は真面目過ぎるが故に、自室に帰ると気力体力共に限界を迎えていたのかもしれません。
完璧主義者だからこそ、仕事にも交流にも手を抜けない。
そんな状況が彼自身を追い詰め、セルフネグレクトに陥ってしまったのではないでしょうか。
彼はセルフネグレクトによる不衛生・不摂生な生活を送っていたからか、持病を抱えていたようです。
住居内のゴミの山からは処方薬が幾つか発見されました。
家族に室内の写真を見せると驚かれることも
孤独死の大きな要因となる「セルフネグレクト」には、必ずと言っても良いほど何らかのきっかけから起こります。
そのきっかけは様々なものがありますが、下記にいくつかの例を出してみました。
・家族との死別 ・退職 ・身体状態の悪化 ・ストレス |
この例を見ると、どれも予測不能なものばかりで、セルフネグレクトはいつ誰に起こってもおかしくないことがわかります。
例えば、先ほどご紹介した男性の例を挙げると、彼は自身の完璧主義な性格が仇となりセルフネグレクトに陥ってしまいました。
それでも外に出る時には、パリッと整えられたスーツを着用し、真面目で完璧な自分自身を演じ続け、1歩でも自室内に入ればストレスによる疲労で自己放任になり自分自身の生活を維持する体力も残らないという負のサイクルに陥ってしまったのです。
しかし、彼は元々完璧主義な性格だったことから、セルフネグレクトになる前は室内でも几帳面だったことが伺える品が見つかっています。
例えば、生ごみを捨てるためなのか袋状に自作されたちり紙の工作など。
実際、この男性のご遺族の方に室内の状況を知らせるため、写真をお見せしたところ「昔はこんな人じゃなかった」と大変驚かれた様子でした。
セルフネグレクトとは怖いもので、他者に気付かれることはなく自覚もないまま、過程を経て徐々に悪化の一途を辿っていくのです。
特殊清掃を行うことで人生観に大きな変化が出た
孤独死の数は年々増え続け、毎日どこかで誰かが孤独に亡くなっています。
そしてそれと共に、特殊清掃の依頼はやってきます。
こうして、特殊清掃を通して目の当たりにした「人の死」を、特殊清掃員としてだけではなく、個人として感じたことをご紹介します。
人との繋がりなくして人は生きられない
「人間」という生き物は古来から集団で生活する生き物です。
そのため、孤独な状況に置かれると「不安」や「さみしい」といった感情を抱き、これは大きなストレスにもなります。
それは動物行動学の観点からみても、我々に本能として備わっているもの。
例えば、人の「群れ」は地域や学校、会社など様々な形のものがあります。
昔によく目にした、世話を焼いてくれる近所の人や、地域の子供を叱ってくれる中年男性がいたのも、「地域のコミュニティ」が「群れ」として人間社会に成り立っていたことの表れなのです。
しかし現代はインターネットの普及や単独世帯率の上昇などから、人同士のコミュニティはどんどん減少し、他者との交流を一切遮断した生活を送る人も少なくありません。
そして人間が人との交流を必要とする理由は、精神的な「安心感」だけでなく助け合うこと・気遣うこと・見守ることで本質的な安心をもたらします。
それは我々人間にとって無くてはならないものであり、孤独死を防止するために最も大切なことだと考えます。
孤独死へと歩むきっかけとなる「何らかの要因」
孤独死の要因として孤立やセルフネグレクトが挙げられますが、孤独死で亡くなってしまった人達をみていると、元は几帳面だったり外交的な性格だったりします。
それは、本質的な性格など関係なく、誰もが孤立・セルフネグレクトに陥る危険性と隣り合わせだということを表します。
仕事がなくなった・家族と死別したなど、人によりそのきっかけは様々ですが、どれもいつ自分の身に起こるかもわからない「きっかけ」から孤独死へと進んでしまうのです。
こうした、何らかのきっかけは自分自身で防ぎようのないものばかりです。
しかし、少しでも人との交流を持つことや、一人暮らしの家族や友人には定期的に連絡を取るようにする、など簡単なことで孤独死そのものを防ぐことができる可能性は充分にあります。
このような心がけを行うことで孤独な死を遂げる人が少しでも減っていくことを願います。
特殊清掃について詳しくはこちらの記事をお読みください。
▼孤独死現場での特殊清掃事例
まとめ
大きな社会問題となりつつある孤独死。
今この瞬間にも、どこかで孤独に亡くなっている人がいます。
林商会では特殊清掃や遺品整理を通し、ご依頼いただいた全ての方の不安を少しでも多く取り除くことができるよう、お客様に寄り添ったサービスに取り組んでまいりました。
それは金額として掲示できない弊社独自のきめ細やかなサービスであると自負しております。
相談料は無料で、メール相談は24時間受け付けており、お電話からもご相談いただけます。
万が一の際には下記からご相談ください。
孤独死全般について詳しくはこちらの記事をお読みください。
▼孤独死とは?増加の原因や対処・予防方法について