近所のゴミ屋敷を行政は対応してくれるのか?自治体による条例の違いと対処法を紹介!

ごみ屋敷 行政アイキャッチ

住んでいる地域にゴミ屋敷があり、悪臭や害虫の被害に困っている時はどうすればいいのでしょうか?

こうしたトラブルを地域住民の力だけで解決するのは難しく、直接ゴミ屋敷の住人に苦情を言うと、トラブルの原因になってしまう危険性もあります。

自治体ごとにゴミ屋敷に関する条例が制定されているので、まずは役所に相談してみましょう。

本記事では、ゴミ屋敷が近所にある時の対処法についてや、行政によるゴミ屋敷の強制撤去までの流れを紹介します。

ゴミ屋敷の実態について詳しくはこちらの記事をお読みください。
ゴミ屋敷に陥る心理と対処法について

ゴミ屋敷問題を行政に頼れるのか

現在の日本には、ゴミ屋敷を取り締まる法律がありません

ゴミを放置しているからといって、それが犯罪にはならないのです。

周辺の住民から見ればゴミであっても、本人にとっては大切なものである可能性があります。

自分の財産を自分の家に溜めておくことは、決して悪いことではないですよね。

しかし、ゴミ屋敷による火災や悪臭・害虫被害は、放置しておけない問題です。

そのため、近年は独自の条例を制定する地方自治体も増えてきました

各市町村区により条例の内容は異なりますが、何かしらの対応をしてくれる可能性はあるということです。

ゴミ屋敷を行政が撤去する流れ

行政が行うゴミ屋敷への対応は、以下のようになっています。

自治体によって違いがあるため、基本的な流れとして覚えておきましょう。

まずは市役所に相談する

住民からの苦情がなければ、行政が自主的に動くことはほとんどありません。

ですからまずは、ゴミ屋敷に困っているということを市役所などへ相談してください。

「悪臭がひどい」「通路をゴミで塞がれて困っている」「害虫被害がある」「火災が心配」など、具体的に伝えるとよいでしょう。

行政職員によるゴミ屋敷住人への指導

苦情を元に、まずは行政職員が調査を行います。

具体的には、「周辺住民への聞き取り」「現地のゴミの状況や建物の確認」「建物の所有権の確認」「親族関係」などです。

これらを総合的に判断し、本人への指導が行われます。

ゴミ屋敷の住人は、経済的に困窮していたり、認知症や心の病気を抱えていることもあり、それが原因で解決に至らないことも多いです。

そのため、金銭面での支援カウンセリングなどをあわせて行う自治体もあります。

ゴミ屋敷問題を解決するには、本人が問題と向き合い、早い段階で行動してくれることが一番です。

ただ、それでも解決に至らなかったり、指導を拒否したりする場合は、次の段階に移ります。

文書による警告や名前の公開

指導を拒否したり、支援をしても改善されなかったりする場合は、文書での警告が行われます。

この文書はあくまで「指導に従うように促すもの」です。

何かを強制したりする力はなく、解決するためには本人の行動を待つしかありません。

文書での警告と共に、名前を公開する自治体もあります。

これにより、ゴミの片付けを自主的に行ったり、支援をお願いする人もいます。

ただ、度重なる指導や戒告を無視し続ける場合に行なわれるのが、強制措置です。

行政代執行によるゴミの強制撤去

指導や支援、書面による警告に応じなかった場合、行政はゴミの強制撤去を行うことができます。

これを「行政代執行」といいます。

第二条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。
衆議院 「法律第四十三号(昭二三・五・一五)」より引用(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/00219480515043.ht)

 

ゴミ屋敷の件においても、行政代執行は最終手段です

強制的な措置なので、執行するにあたっては厳しい審査があり、執行前には文書での戒告が行われます。

個人の家の所有物を許可なく片付けるのですから、非常に強い手段といえるでしょう。

ゴミの撤去費用は住人が支払う

ゴミの強制撤去にかかる費用は、ゴミ屋敷の住人が支払います。

ただしその場で支払うことは難しいので、一時的には税金が使われることを知っておきましょう。

強制的にゴミを片付けたといっても、その迷惑行為の原因を作ったのはゴミ屋敷の住人。

費用を支払う義務は、その住人にあるのです。

仮に請求を拒否したり滞納したりした場合は、税金と同様差し押さえなどの処分が行われます

自治体によるゴミ屋敷条例の違い

ゴミ屋敷に関する条例の内容は、各自治体によって異なります。

具体的にどのような内容なのか、4つの自治体の条例を見てみましょう。

東京都世田谷区の条例

東京都世田谷区では、2016年に「世田谷区住居等の適正な管理による良好な生活環境の保全に関する条例」が施行されました。

住居等に物品が堆積・散乱し、住人や周辺住民の生活環境が著しく損なわれている状態の家を、いわゆるゴミ屋敷として定義しています。

具体的には道路にゴミが溢れていたり、悪臭が発生していたり、ゴキブリやネズミなどが群生している場合です。

これらの問題を解決するため、世田谷区では必要な助言や支援を行っています。

ただし、強制的な撤去は行わない方針

やむを得ない事情がある場合は、区が片付けや整理整頓などを「代わりに」行い、その費用を請求するという形になっています。

神奈川県横浜市の条例

神奈川県横浜市では、2016年に「横浜市建築物等における不良な生活環境の解消及び発生の防止を図るための支援及び措置に関する条例」が施行されました。

定義については世田谷区とほとんど変わりません。

ただ、解決に向けての手順や対策、連絡先がわかりやすく示されており、自治体の動きが見えやすく周辺住民も行動しやすいのが特徴です。

ゴミ屋敷の責任は本人にあるとしながらも、解決するにはその背景にある課題に取り組まなければならないという考えの横浜市。

ゴミの強制撤去は最終手段としてありますが、基本的には住人に寄り添い、ゴミの片付け支援や福祉制度の紹介などを行っています。

愛知県豊田市の条例

愛知県豊田市では、2016年に「豊田市不良な生活環境を解消するための条例」が施行されました。

これまでの2つの自治体と比べると、より実効力があるこちらの条例。

本人の同意なく立ち入り調査ができたり、火災や倒壊の恐れがある緊急の場合は直ちに必要最低限の措置を行ったりすることができます

代執行によるゴミの強制撤去、および費用の請求も行われ、措置命令に従わない場合、氏名の公表5万円以下の過料の徴収(いわゆる罰金)が科せられます。

これまで「見守り型」の支援を行ってきた豊田市ですが、それによりゴミ屋敷の住人が支援を拒否したり、解決までに時間がかかったりしてきたそうです。

継続した支援も行いつつ、より実効性継続性がある対策を取れるような条例へと変わっています。

大阪府大阪市の条例

大阪府大阪市では、2014年に「大阪市住居における物品等の堆積による不良な状態の適正化に関する条例」が施行されました。

条例の制定にあたり、アンケート調査でゴミ屋敷の実態を把握。

いわゆるゴミ屋敷を、「ゴミの堆積により、悪臭や害虫が発生していたり、火災発生の恐れがあったりし、周辺の生活環境が著しく損なわれている状態」と定義し、支援を行っています。

直ちに強制撤去するのではなく、住人に寄り添った支援を行う大阪市。

ゴミ撤去までの福祉支援や経済的な支援、そして再びゴミ屋敷に戻らないための見守りなどもあわせて行っています

ゴミ屋敷をなんとかしたい!どう対処法する?

自治体でゴミ屋敷への対処を行ってくれるとはいえ、それだけでは不安なこともあります。

条例が制定されていない自治体では、すぐに対処してくれない可能性も。

そんな時に周辺住民としてできることをご紹介します。

まずは自治体の条例を確認

まずはじめに、自分が住んでいる自治体の条例をチェックしましょう。

対策条例があれば、スムーズに対応してくれる可能性が高いです。

ただし、ゴミ屋敷に関する条例はわかりづらい名前であることがほとんど。

HPなどで対策条例の有無が確認できない場合は、直接市町村区の役所に行って聞いてみましょう。

対策条例がない場合も、何かしらの措置をしてくれる可能性はあるので、まずは自治体に相談してください。

賃貸物件なら大家さんや管理会社に相談

ゴミ屋敷が賃貸物件である場合は、大家さんや管理会社にも相談してください。

直接本人に苦情を伝えると、思わぬトラブルが発生する可能性があります。

ゴミ屋敷の住人に拒否されるだけならよいですが、嫌がらせを受けるなどの被害が発生したら大変です。

それよりは、大家さんや管理会社から名前を伏せて苦情を伝えてもらった方が、より安心でしょう。

持ち家の場合は弁護士に相談

弁護士に相談するという方法もあります。

特に、管理会社などがない持ち家の場合はこの対処法を知っておくと安心です。

弁護士に相談する際は、地域の人たちと協力する必要があります。

困っている人数が多いほど、弁護士も動きやすくなるはず。

署名と共に、どんな被害や心配があるのかも書面にまとめておきましょう

ゴミ屋敷の写真をつけるのもよい方法です。

警察や消防署にも伝えておく

ゴミ屋敷は火災のリスクが高いです。

そのリスクを最小限に抑えるため、事前に警察や消防署に場所を伝えて現状を把握しておいてもらいましょう

そうすれば、もし火災が起こった時にもすぐに出動してくれるかもしれません。

警察による見回りがあれば、放火が原因の火災も未然に防ぐことができるでしょう。

ゴミ屋敷の住人だけでなく、自分自身を守るためにも、できることはしておくのがおすすめです。

なんとしてでもゴミ屋敷問題を解決したい

ゴミ屋敷問題は、そこに住む住人の問題です。

しかし、放置しておけばさまざまなリスクが生じることは明らかでしょう。

悪臭、害虫、放火による火災…。

本人の問題とはいえ、地域に影響が及ぶのを黙って見ているわけにはいかないはずです。

困った時は、まず市役所などへ行って相談を

弁護士や警察、地域の住民とも協力しながらゴミ屋敷問題を解決していきましょう。

ゴミ屋敷で清掃業者への依頼をご検討中の方はこちらの記事をお読みください。
清掃業者の選び方と料金相場について

まとめ

ゴミ屋敷問題を解決するために、対策条例が制定されている自治体も多くあります。

1人で抱え込まず、まずは行政に相談してみてください。

ゴミ屋敷問題の解決には時間がかかることも多いですが、焦りは禁物。

冷静に慎重に対応していくことが、円満・早期解決につながるはずです。

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