住んでいる地域にゴミ屋敷があり、悪臭や害虫の被害に困っている時はどうすればいいのでしょうか?
こうしたトラブルを地域住民の力だけで解決するのは難しく、直接ゴミ屋敷の住人に苦情を言うと、トラブルの原因になってしまう危険性もあります。
自治体ごとにゴミ屋敷に関する条例が制定されているので、まずは役所に相談してみましょう。
本記事では、ゴミ屋敷が近所にある時の対処法についてや、行政によるゴミ屋敷の強制撤去までの流れを紹介します。
ゴミ屋敷の実態について詳しくはこちらの記事をお読みください。
▼ゴミ屋敷に陥る心理と対処法について
目次
ゴミ屋敷問題を行政に頼れるのか
現在の日本には、ゴミ屋敷を取り締まる法律がありません。
ゴミを放置しているからといって、それが犯罪にはならないのです。
周辺の住民から見ればゴミであっても、本人にとっては大切なものである可能性があります。
自分の財産を自分の家に溜めておくことは、決して悪いことではないですよね。
しかし、ゴミ屋敷による火災や悪臭・害虫被害は、放置しておけない問題です。
そのため、近年は独自の条例を制定する地方自治体も増えてきました。
各市町村区により条例の内容は異なりますが、何かしらの対応をしてくれる可能性はあるということです。
ゴミ屋敷を行政が撤去する流れ

行政が行うゴミ屋敷への対応は、以下のようになっています。
自治体によって違いがあるため、基本的な流れとして覚えておきましょう。
まずは市役所に相談する
住民からの苦情がなければ、行政が自主的に動くことはほとんどありません。
ですからまずは、ゴミ屋敷に困っているということを市役所などへ相談してください。
「悪臭がひどい」「通路をゴミで塞がれて困っている」「害虫被害がある」「火災が心配」など、具体的に伝えるとよいでしょう。
行政職員によるゴミ屋敷住人への指導
苦情を元に、まずは行政職員が調査を行います。
具体的には、「周辺住民への聞き取り」「現地のゴミの状況や建物の確認」「建物の所有権の確認」「親族関係」などです。
これらを総合的に判断し、本人への指導が行われます。
ゴミ屋敷の住人は、経済的に困窮していたり、認知症や心の病気を抱えていることもあり、それが原因で解決に至らないことも多いです。
そのため、金銭面での支援やカウンセリングなどをあわせて行う自治体もあります。
ゴミ屋敷問題を解決するには、本人が問題と向き合い、早い段階で行動してくれることが一番です。
ただ、それでも解決に至らなかったり、指導を拒否したりする場合は、次の段階に移ります。
文書による警告や名前の公開
指導を拒否したり、支援をしても改善されなかったりする場合は、文書での警告が行われます。
この文書はあくまで「指導に従うように促すもの」です。
何かを強制したりする力はなく、解決するためには本人の行動を待つしかありません。
文書での警告と共に、名前を公開する自治体もあります。
これにより、ゴミの片付けを自主的に行ったり、支援をお願いする人もいます。
ただ、度重なる指導や戒告を無視し続ける場合に行なわれるのが、強制措置です。
行政代執行によるゴミの強制撤去
指導や支援、書面による警告に応じなかった場合、行政はゴミの強制撤去を行うことができます。
これを「行政代執行」といいます。
| 第二条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。 |
ゴミ屋敷の件においても、行政代執行は最終手段です。
強制的な措置なので、執行するにあたっては厳しい審査があり、執行前には文書での戒告が行われます。
個人の家の所有物を許可なく片付けるのですから、非常に強い手段といえるでしょう。
ゴミの撤去費用は住人が支払う
ゴミの強制撤去にかかる費用は、ゴミ屋敷の住人が支払います。
ただしその場で支払うことは難しいので、一時的には税金が使われることを知っておきましょう。
強制的にゴミを片付けたといっても、その迷惑行為の原因を作ったのはゴミ屋敷の住人。
費用を支払う義務は、その住人にあるのです。
仮に請求を拒否したり滞納したりした場合は、税金と同様差し押さえなどの処分が行われます。
自治体によるゴミ屋敷条例の違い

ゴミ屋敷に関する条例の内容は、各自治体によって異なります。
具体的にどのような内容なのか、4つの自治体の条例を見てみましょう。
東京都世田谷区の条例
東京都世田谷区では、2016年に「世田谷区住居等の適正な管理による良好な生活環境の保全に関する条例」が施行されました。
住居等に物品が堆積・散乱し、住人や周辺住民の生活環境が著しく損なわれている状態の家を、いわゆるゴミ屋敷として定義しています。
具体的には道路にゴミが溢れていたり、悪臭が発生していたり、ゴキブリやネズミなどが群生している場合です。
これらの問題を解決するため、世田谷区では必要な助言や支援を行っています。
ただし、強制的な撤去は行わない方針。
やむを得ない事情がある場合は、区が片付けや整理整頓などを「代わりに」行い、その費用を請求するという形になっています。
神奈川県横浜市の条例
神奈川県横浜市では、2016年に「横浜市建築物等における不良な生活環境の解消及び発生の防止を図るための支援及び措置に関する条例」が施行されました。
定義については世田谷区とほとんど変わりません。
ただ、解決に向けての手順や対策、連絡先がわかりやすく示されており、自治体の動きが見えやすく周辺住民も行動しやすいのが特徴です。
ゴミ屋敷の責任は本人にあるとしながらも、解決するにはその背景にある課題に取り組まなければならないという考えの横浜市。
ゴミの強制撤去は最終手段としてありますが、基本的には住人に寄り添い、ゴミの片付け支援や福祉制度の紹介などを行っています。
愛知県豊田市の条例
愛知県豊田市では、2016年に「豊田市不良な生活環境を解消するための条例」が施行されました。
これまでの2つの自治体と比べると、より実効力があるこちらの条例。
本人の同意なく立ち入り調査ができたり、火災や倒壊の恐れがある緊急の場合は直ちに必要最低限の措置を行ったりすることができます。
代執行によるゴミの強制撤去、および費用の請求も行われ、措置命令に従わない場合、氏名の公表、5万円以下の過料の徴収(いわゆる罰金)が科せられます。
これまで「見守り型」の支援を行ってきた豊田市ですが、それによりゴミ屋敷の住人が支援を拒否したり、解決までに時間がかかったりしてきたそうです。
継続した支援も行いつつ、より実効性・継続性がある対策を取れるような条例へと変わっています。
大阪府大阪市の条例
大阪府大阪市では、2014年に「大阪市住居における物品等の堆積による不良な状態の適正化に関する条例」が施行されました。
条例の制定にあたり、アンケート調査でゴミ屋敷の実態を把握。
いわゆるゴミ屋敷を、「ゴミの堆積により、悪臭や害虫が発生していたり、火災発生の恐れがあったりし、周辺の生活環境が著しく損なわれている状態」と定義し、支援を行っています。
直ちに強制撤去するのではなく、住人に寄り添った支援を行う大阪市。
ゴミ撤去までの福祉支援や経済的な支援、そして再びゴミ屋敷に戻らないための見守りなどもあわせて行っています。
京都府京都市の条例
京都市は、全国で初めて条例に基づいてゴミ屋敷の強制撤去を実施した自治体です。
この取り組みは「京都市不良な生活環境を改善するための支援及び措置に関する条例」によって進められており、ゴミ屋敷の調査・指導・強制撤去までを可能とする法的枠組みが整備されています。
条例の内容は、特にゴミ屋敷の住民への支援に重点が置かれている点が特徴です。
具体的には、「ゴミ屋敷対策プロジェクトチーム」を立ち上げるとともに、住民支援を担う「地域あんしん支援員」を配置し、本人による片付けを促す体制を整えています。
強制撤去はあくまでも最終手段であり、本人が自力で片付けることが困難な場合に限り、住民と連携して清掃を進める方式が取られています。
兵庫県神戸市の条例
神戸市では「神戸市住居等における廃棄物その他の物の堆積による地域の不良な生活環境の改善に関する条例」により、ゴミ屋敷問題に対応しています。
この条例の基本的な内容は京都市とほぼ同様ですが、神戸市ならではの取り組みとして、ゴミ撤去にかかる費用を最大100万円まで補助する「支援金制度」が設けられています。
この支援金を受け取るには、以下の条件を満たす必要があります。
- 経済的に困窮していること
- 本人が片付ける意思を持っていること
- 再発防止策が講じられていること
ゴミ屋敷の背景には、経済的な事情が大きく関わっている場合があります。
片付けたい気持ちはあっても、業者に依頼する費用を捻出できないというケースも少なくありません。
神戸市のように、経済的支援を行っている自治体は他にも存在するので、まずはお住まいの自治体の条例を確認してみましょう。
ゴミ屋敷をなんとかしたい!どう対処法する?

自治体でゴミ屋敷への対処を行ってくれるとはいえ、それだけでは不安なこともあります。
条例が制定されていない自治体では、すぐに対処してくれない可能性も。
そんな時に周辺住民としてできることをご紹介します。
まずは自治体の条例を確認
ゴミ屋敷に関する問題に直面したら、まずはお住まいの自治体で「対策条例」が制定されているかどうかを確認しましょう。
条例が整備されている地域では、調査・指導・強制撤去などの具体的な対応がスムーズに行われる可能性が高くなります。
ただし、こうした条例は「ゴミ屋敷条例」という分かりやすい名前であるとは限らず、たとえば「生活環境の保全に関する条例」や「不良住宅環境是正条例」など、名称が分かりづらいケースも多いのが実情です。
ホームページで見つけられない場合は、直接市区町村の役所を訪れたり、電話で問い合わせたりするのがおすすめです。
条例がまだ制定されていない場合でも、自治体によっては独自の支援や訪問対応などを行なってくれることがあります。
まずは、「相談すること」から始めてみましょう。
行政に現状を伝えることで、思わぬ支援につながることもあります。
役所に相談する
たとえお住まいの地域にゴミ屋敷に関する条例がまだ整備されていなくても、役所へ相談することは可能です。
条例がない場合は強制的な撤去や直接的な支援が難しいケースがほとんどですが、自治体職員が現地を訪問し住民の状況を確認したり、ゴミ屋敷の所有者に声かけを行ったりすることがあります。
近隣のゴミ屋敷によって、以下のような問題が発生している場合は、迷わず役所に相談しましょう。
- ゴミが道路にはみ出しており、通行が困難になっている
- 害虫の発生や悪臭がひどく、生活に支障が出ている
- 家の外にまでゴミが溢れ、火災の危険性が高くなっている
このような状況があれば、個人だけで悩まず、近隣住民と協力して声を上げることも大切です。複数人の意見があれば、行政も動きやすくなります。
自治体によっては、ゴミ屋敷の本人やその家族、あるいは近所の方からの相談を受けた場合、専門の清掃業者を紹介してくれることがあります。
また、直接的な指導まではいかなくても、職員が現地の様子を見に来てくれる可能性もあります。
賃貸物件なら大家さんや管理人、管理会社に相談
同じマンションやアパート内でゴミ屋敷の問題が発生した場合、まずは管理人や管理会社に相談することが第一歩です。
トラブルを直接本人に伝えようとする方も多くいますが、住民は片付けを拒否したり、逆に対立が深まったりするリスクがあります。
状況によっては、嫌がらせや言い争いなど、二次的な問題に発展する可能性もあるため注意が必要です。
マンションの管理人や管理会社は、住民への注意喚起や改善の働きかけが可能です。
まずは信頼できる第三者である管理側に相談し、対応を依頼しましょう。
持ち家の場合は弁護士に相談
持ち家で管理会社が存在しない場合、ゴミ屋敷問題に対応するために弁護士へ相談するという方法も有効です。
法律の専門家である弁護士に相談することで、民事的な対応(損害賠償請求・仮処分など)や今後の進め方について具体的なアドバイスを受けることができます。
ただし、こうした法的対応を進めるためには、地域住民との連携が重要です。
複数人で相談すれば、被害の深刻さや地域への影響をより説得力を持って伝えることができ、弁護士も対応しやすくなります。
相談する際には、以下のような資料を準備しておくと効果的です。
- 住民の連名による署名
- ゴミ屋敷によって受けている被害や不安の具体的な内容をまとめた書面
- 現場の写真(外観、道路の様子、悪臭・害虫の影響が分かるものなど)
問題が長期化しそうな場合や、すでに生活に支障が出ている場合は、早めに弁護士への相談を検討しましょう。
警察や消防署にも伝えておく
ゴミ屋敷の状態がひどく、火災や安全面でのリスクが高まっている場合は、警察や消防署に情報を共有しておくことが重要です。
ゴミ屋敷は放火の標的になりやすく、ひとたび火が出れば大量の可燃物が被害を拡大させる恐れがあります。
事前に警察や消防署へ現場の状況を伝えておくことで、緊急時の迅速な対応や巡回強化などの対策を講じてもらえる可能性があります。
火災を未然に防ぐためにも、「危ないかもしれない」と感じた時点で早めに連絡しておくと安心です。
なんとしてでもゴミ屋敷問題を解決したい

ゴミ屋敷問題は、そこに住む住人の問題です。
しかし、放置しておけばさまざまなリスクが生じることは明らかでしょう。
悪臭、害虫、放火による火災…。
本人の問題とはいえ、地域に影響が及ぶのを黙って見ているわけにはいかないはずです。
困った時は、まず市役所などへ行って相談を。
弁護士や警察、地域の住民とも協力しながらゴミ屋敷問題を解決していきましょう。
ゴミ屋敷で清掃業者への依頼をご検討中の方はこちらの記事をお読みください。
▼清掃業者の選び方と料金相場について
まとめ

ゴミ屋敷問題を解決するために、対策条例が制定されている自治体も多くあります。
1人で抱え込まず、まずは行政に相談してみてください。
ゴミ屋敷問題の解決には時間がかかることも多いですが、焦りは禁物。
冷静に慎重に対応していくことが、円満・早期解決につながるはずです。
ゴミ屋敷の清掃に関して、清掃業者への依頼をご検討中の方はぜひ林商会までお問い合わせください!




















