終活で相続にお悩みの方も多いのではないでしょうか。
相続には自分の財産を把握できる「財産目録」の作成がおすすめです。
ここでは財産目録を作成する理由や具体的な書き方について紹介します。
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目次
財産目録とは
終活では身の回りの荷物の整理や葬儀、お墓の準備をしますが、その中でももっとも重要なのが財産の整理です。
財産の整理をきちんとしておけば相続がスムーズに進み、遺された家族の負担を軽減できます。
その財産の整理に不可欠なのが「財産目録」です。
ここでは財産目録について詳しく解説します。
所有している財産を一覧にまとめたもの
財産目録とは、自分が所有している財産の一切をわかりやすくまとめた一覧表のことです。
終活における財産整理とは、自分が亡くなった後に行われる相続のために財産を正確に把握するだけでなく、それを見える形にして残しておくことが必要になります。
財産目録は、それを実現するためにとても有効な方法です。
プラスの財産とマイナスの財産を両方記入する
財産というと、お金や土地などの引き継ぐ人にとって利益があるものと考えられがちです。
しかし、財産にはプラスになるものとマイナスになるものがあり、それぞれを考慮したうえで財産目録を作成しなくてはなりません。
マイナスの財産は書きにくいかもしれませんが、正しく記録しないと相続の際にトラブルになるので注意が必要です。
プラスの財産
プラスの財産の具体例を以下で紹介します。
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これらは経済的な価値がある財産なので、プラスの財産です。
マイナスの財産
一方、マイナスの財産には以下のようなものがあります。
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これらの財産は支払いの義務が残るので、マイナスの財産とされています。
財産目録を書く理由やメリット
財産目録の作成は法律などで義務付けられているわけではありません。
しかし、財産目録を書く理由やメリットを正しく理解できれば、その必要性を認識できるでしょう。
ここからは、財産目録を書く理由やメリットを3つ紹介します。
相続の際に諸々の手続きがスムーズに
財産目録があれば遺族は故人の財産を把握しやすくなります。
たとえ家族であっても、故人がどのような財産をどの程度所有しているのかを把握することは難しいでしょう。
最近では、銀行口座以外にもネット銀行や電子マネーなどインターネットを利用してお金を管理する人が増えているため、本人以外の人が財産を管理・把握することは非常に困難です。
そのため、財産目録を残さないまま他界すれば、遺された家族がすべての財産をいちから探すことになり、その精神的な負担は計り知れません。
相続は、大切な家族を亡くして精神的にダメージを受けている時期に、同時進行で行なっていくため、なおさら負担は大きくなります。
そのようなときに、財産目録が用意されていれば遺族の負担を減らすことができるのです。
財産目録を作成する目的はそれだけではありません。
遺言書を作成する際に遺言書に添付もできます。
財産目録を作成して所有する財産を正しく把握できれば、遺言書に「どの財産を、誰に、どの割合で分割するか」を明確に書き記すことができます。
有効な遺言書と財産目録を作成しておけば、相続における家族同士のトラブルを避けることができ、円満な相続を実現できるでしょう。
相続税の申告が必要か確認できる
財産を相続した場合は「相続税」を申告する義務があります。
ただし、相続したからといって必ずしも申告が必要とは限りません。
相続税には「基礎控除」があり、控除額を超えていなければ申告は不要です。
相続税の基礎控除は以下の計算式によって算出できます。
相続税の基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
所有する財産がひと目でわかる財産目録は、相続税の申告が必要かどうかを判断する際に役立ちます。
できるだけ正しい財産の価値を調べておきましょう。
もし、すべての財産を把握していなければ、相続税の申告漏れが起こりやすくなり、追加で税金を課されることもあります。
相続放棄の判断材料にもなる
故人の財産は相続人が相続するのが基本なので、プラスの財産もマイナスの財産も相続しなくてはなりません。
しかし、マイナスの財産がプラスの財産を上回るような場合は、相続人の意思により「相続放棄」の選択ができます。
財産目録にマイナスの財産も明記しておけば、すべての遺産がマイナスになるかが一目でわかるので相続放棄の判断材料になるでしょう。
財産目録作成ガイド
ここからは、財産目録の作成方法を紹介します。
作成は難しく面倒だと思われるかもしれませんが、書き方の要点さえ押さえておけば財産目録は手軽に作成できます。
正確な財産目録を作成するコツは、短時間で終わらせようとするのではなく、時間をかけて丁寧に確認することです。
目録の作成は手書きでもパソコンでもよい
財産目録は遺言書に添付する資料になるため、手書きでなくてはダメだと思い込んでいる人もいるようです。
しかし、財産目録には特定の書式やルールなどはなく、手書きでもパソコンでも作成できます。
財産目録は作成する義務があるものではないので、自分が書きやすいと思う方法で書きましょう。
あくまでも自分の財産を整理してわかりやすい形で残しておくことが目的なので、あまり難しく考える必要はありません。
書き込む内容
財産目録に書き込む内容は以下の3つです。
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「財産の種類」とは、不動産・預貯金・有価証券・自動車・生命保険などのことです。
「預金した金融機関や土地の住所」とは、銀行名や証券会社名などのことで、土地の住所は登記事項証明書などを元に正確に記載しましょう。
「金額や数量、広さなど」とは、預貯金の金額や自動車の台数、不動産の広さなどのことで、それらの価値を金額も含めて記載します。
マイナス財産の書き方
プラスの財産とマイナスの財産では書き方が異なります。
マイナスの財産には以下の4つの項目を記載する必要があります。
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「債権者氏名等」と「債権者の連絡先」とは、返済する相手の名前や連絡先・住所のことです。
「負債額」には、これらから返済していく金額の総額を書きます。
「債務の返済方法」には、返済日や具体的な返済方法、毎月の返済額を記載します。
その他にも、ボーナス併用支払いがないか、返済完了予定日はいつかなど返済に必要と思われる情報があれば備考欄などを設けて残しておくとわかりやすく、家族も安心します。
マイナスの財産がある場合には、できるだけ生前に返済できるように努め、家族の不安を少しでも減らしてあげましょう。
財産目録を書く際の注意点
財産目録の書き方を知り、思っていたよりも難しくないと感じた方も多いのではないでしょうか。
しかし、財産目録の作成は誰かに相談することが少ないため、小さなミスや漏れが起こりやすいのも事実です。
その小さなミスや漏れが相続のトラブルを招いたり家族の負担を大きくすることにつながったりする可能性があります。
ここからは、より正確に財産目録を書くために知っておくべき3つの注意点を紹介します。
10年以上入出金がない口座は消滅する
複数の銀行口座をお持ちの方も多いと思いますが、最近使っていない口座はありませんか?
銀行口座は、預金が残っている場合でも、10年以上入出金が確認できないと自動的に消滅してしまいます。
財産目録は通帳やキャッシュカードを元に作成するため、すでに消滅している口座を誤って記載することがあります。
財産目録に記載されているのに口座や預金がないとなれば、家族は混乱してしまいます。
これを機に無効な口座の有無を確認し、不要な口座は解約するなどして誤った情報を記載しないように気をつけましょう。
また、最近ではネット銀行を利用する人も多いようですが、ネット銀行には通帳がありませんので、記載漏れがないように注意する必要があります。
借地権も不動産として記載
「借地権」とは、土地を借りて家を建てる場合に、その土地を借りる権利のことです。
借地権も不動産に含まれますが、うっかり書くのを忘れてしまう人も多いようです。
借地権も相続税の課税対象となるので、記載漏れがないように注意しましょう。
宝石・貴金属も高価なものは記入
先程紹介した以外にも、以下のものはプラスの財産となる場合があります。
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これらの価値を正しく把握するためには、宝石鑑定士などに査定を依頼する必要があるため、財産目録への記載を省略するケースがあります。
しかし、高価な宝石などを家族が引き継ぐとそれも相続とみなされ、相続税が課されます。
そのことが税務署に知れた場合は、たとえ悪意がなかったとしても追徴課税の対象となり、高い税金の支払いが必要になる可能性があります。
自分で宝石などの価値を判断するのは難しいですが、目安としては「購入した際の金額が高かったもの」や「換金すると大きな金額になりそうなもの」はあらかじめ資産として財産目録に記入しておくようにしましょう。
まとめ
財産目録を作成することは、自分の身辺を整理するのと同時に遺された家族を守ることにもなります。
プラスの財産もマイナスの財産もすべて洗い出し、正確に財産目録に残しましょう。
また、財産目録は定期的に更新し、最新の情報を残しておくことも大切です。
この記事が、財産目録の作成のお役に立てれば幸いです。
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