高齢者の孤独死:特殊清掃員が感じた孤独死の原因は?一人暮らしの増加や社会的孤立を防ぐために

孤独死 30代

高齢化社会が叫ばれる昨今、貧困化や核家族化の進行など様々な要因から、徐々に孤独死の件数は上昇し続け今や大きな社会問題となっています。

我々、林商会では孤独死のあった住居の特殊清掃・原状回復及び、遺品整理を行っています。

そこでこの記事では、特殊清掃を通して我々が見た孤独死の現状を紹介することで、少しでも多くの方に孤独死は決して他人事ではなく個々の心がけ無くして防ぐことはできない問題なのだと認識していただければ幸いです。

高齢者による孤独死の数

孤独死には明確な定義や全国的なデータはない

社会問題とされる孤独死ですが、現在孤独死には明確な定義が存在せず、地域や研究グループにより解釈が異なります

・東京都監察医務院「異状死の内、自宅で死亡した一人暮らしの人(の死)」
・一般社団法人日本少額短期保険協会「自宅内で死亡し死後判明に至った1人暮らしの人」

これ以外にも、遺体発見時の死後経過日数が条件として追加される・高齢者のみに限定されるなど実に様々な定義付けがされています。

そうしたことから、調査を行う団体により調査対象が異なるため、全国的な正確なデータは存在しないといわれています。

しかし、孤独死をどのように定義するかには関わらず、孤独死の数は年々増加傾向にあるのです。

東京都のデータでは10年で2倍に増加

孤立死発生数

引用:東京都福祉保健局

上記は東京都監察医務院による統計です。

東京都23区内のみを見ても、孤独死された高齢者の数は2,000人を超えており、全国規模で考えると毎年かなりの件数で孤独死が起きていることがわかります。

また上記は高齢者に限った統計ですが、孤独死の約4割は現役世代であり高齢者とされる65歳に満たず亡くなった人の割合は半数を超えるといわれています。

高齢者の孤独死:要因とされるもの

独居老人の増加

独居老人の割合

引用:内閣府

上記は内閣府が発表した、高齢者の単独世帯数の推移と今後の予想を表したものです。

昭和から令和に至るまで、孤独死の潜在的要因となる単独世帯数は上昇し続けており、昭和60年と比較し平成27年には5倍以上となっていることがわかります

孤独死の要因となる単独世帯が増加し続けることにより、今後さらに孤独死の発生件数が増加するのではないかと懸念されています。

年金受給額の引き下げなどによる貧困化

貧困は高齢者の孤独死へ繋がる重大な要素となります。

高齢者の貧困率

引用:高齢者の同居家族の変容と貧困率の将来見通し

上記は高齢者の貧困率の推移と今後の見通しを示したグラフです。

2009年で9.4%だった高齢者全体の貧困率は、緩やかに上昇し続け2030年には15%を超える見通しとなっています。

貧困が高齢者の孤独死に密接に関わる要素となる理由は下記が考えられます。

・適切な治療を受けることができない
・有料介護施設へ入所できない

比較的安価で利用することのできる特別養護老人ホームの入所条件は引き上げられ、さらに今後は高齢者における医療費の削減も検討されています。

そこへ、年金受給額の引き下げが追い打ちをかけることで、日常生活に支障をきたした結果、誰にも看取られることなく孤独に息を引き取る孤独死へと追いやられてしまうのです。

地域や社会からの孤立

孤独死の件数を性別で比較すると、圧倒的に男性の件数が多いとされています。

その理由として、高齢男性の近所付き合いの少なさが挙げられます。

高齢者の近所付き合い男女別

引用:内閣府

高齢者の意識として、男性は外で仕事をし女性は家を守るといった思考があります。

そのため男性は社会で仕事があったころから、家のことや近所付き合いの経験のない人が多く、それは退職後も変わらない人が殆どです。

このように定年退職後、社会から孤立したうえ地域社会にも馴染むことができず結果孤立してしまう高齢者は後を絶たず、周りに助けを求める相手がないために最終的に孤独に亡くなるケースが多く発生しています。

孤独死の原因について詳しくはこちらの記事をお読みください。
孤独死が起こる原因と対策

弊社で扱った高齢者による孤独死の事例

古い団地

遺品整理の依頼のはずが…

我々のもとに、故人の息子だという男性から「母が亡くなったので遺品整理を依頼したい」との連絡が入りました。

後日、遺品整理のため依頼主である男性と、故人が生前に住まれていた団地へ。

室内に残る遺品の整理を依頼主と共に行っていたのですが、特殊清掃も請け負うことの多い我々は、そこで若干の違和感を感じたのです。

「もしかして、お母様はご自宅内で亡くなられたんですか?」

「ええ、そうなんです。実はその辺りで…。」

そう指された先には、500円玉よりも少し大きいサイズほどの若干の体液がありました。

話を聞くと、故人は自宅内で亡くなり死後1週間程が経った頃に発見されたが、高齢だったためか体液の流出や異臭は少なく、汚染度が低いと判断し遺品整理のみを依頼してきたとのこと。

実は、孤独死があったからと言って特殊清掃は必ずしも行わないといけないといった法律などはありません。

しかし、少ないとはいえ若干量の体液はあったため、念のため消毒作業を行いました。

明確には『孤独死』ではなかった


死後1週間も経過してから発見された依頼主の母。

故人はこの家で、夫婦2人暮らしをしており明確には孤独死ではなかったと言います。

故人の夫は数年前から重度の認知症を患っており、日頃からその介護を妻である故人が行っていたそうです。

今回の依頼主である故人の息子を含め、家族とは別居。

介護は忍耐と体力を要すると言いますが、自身も高齢だった故人にとって夫の介護での負担は相当なものだったのでしょう

ところが、夫の認知症は日を追うごとに悪化、それに伴い故人だけで介護を行うことが困難になり、週に一度だけホームヘルパーを利用され始めたそうです。

ヘルパーは訪問前に必ず電話などで故人へ連絡を取っていたそうなのですが、「念のため」と故人から家の合鍵を預かっていたそうです。

しかしある日、ヘルパーが普段通り訪問前に電話をしたが故人との連絡が取れず、自宅に到着してからも連絡がなかったため、預かっていた合鍵で入るとそこには既に亡くなった故人の姿がありました。

認知症の夫は妻の遺体と共に衰弱した状態で発見

こうして、ヘルパーに死後1週間で発見された故人ですが、同居していた認知症の夫は奇跡的に無事保護されたそうです。

この時の、夫の認知症の症状はかなり深刻で、自分自身の身の回りの世話どころか、飲食物を自身の意思で摂取することが困難なほどでした。

そのため夫は発見時、なんとか一命は取り留めていたものの、一切の飲食物を摂取していなかったため、かなり衰弱した状態で発見されたと聞きました。

今回の事例では、たまたまヘルパーが合鍵を所持していたから夫は無事に保護されましたが、少しでもタイミングが違えば夫婦共に亡くなっていた可能性も高く、老々介護の危険性を痛感した事例でした。

台所と洗面所の間で妻は亡くなっていた

故人が亡くなった家は、3DKの典型的な団地の間取り。

DKのある部屋のキッチンの隣辺りから洗面へ通じており、故人はキッチンと洗面の間で亡くなっていました。

亡くなった場所がキッチンや洗面ということから、きっと故人は自身を労わる余裕もなく亡くなる最期の瞬間まで、献身的に夫の世話や家事をしていたのでしょう

夫の認知症が発覚してからも、妻である故人はほとんどご自分で夫の介護をされていたと聞きました。

介護をするには想像以上の体力や負担を要します。

彼らがなぜ、介護施設への入所をしていなかったのか詳しい理由はわかりませんが、老いた身体で行う介護が故人への身体的負担になっていたことは明らかです。

仲睦まじい仲だった夫婦の思い出の品

室内に残った遺品を整理していると、夫婦が若かったころの思い出の品が多く見つかりました。

旅行先で撮ったとされる2ショットの写真、2人の似顔絵、若いころに乗っていたロードバイクなど…。

その数はあまりにも多く、夫婦の仲の良さが伺えます。

見ているだけで、暖かい気持ちになる素敵な夫婦の思い出を、大切に整理させていただいたことを今でも鮮明に覚えています

そして、故人の遺体発見時、かなり衰弱していた夫も我々が遺品整理に伺った頃にはかなり快復されていたらしく、依頼主である息子様夫婦のもとに引き取られるとの話でした。

孤独死の事例について詳しくはこちらの記事をお読みください。
特殊清掃員がみた孤独死の事例とは

特殊清掃の現場から感じた孤独死

丘に立つ老人

定年退職後の生き方

高齢者の孤独死や孤立は、リタイア後の人生の過ごし方に左右されると感じています。

それは、我々が孤独死現場の特殊清掃を通して感じたのが、孤独死された人や孤立していた高齢者には、外の世界との交流を自発的に持たなかった人が多いという点からです。

現役時代は仕事や子育てなどを通して、外の世界との交流があることは必然的なことです。

しかし、退職後・子供の成人後まで外との交流を保つには自発的な行動が不可欠となります。

例えば、ゲートボールなど高齢者同士の趣味の会に参加してみる・身体が元気なのであれば高齢者雇用で働いてみる、などです。

リタイア後の人生では、一度孤立し始めると社会のコミュニティに戻ることが難しくなります

そうして孤立してしまうと、日々に楽しみや希望が持てない・外に出ることがないために体力の衰えが著しくなるなどの心身への不調から、セルフネグレクトへと繋がり、孤独死される高齢者が多いのです。

高齢独身男性の生きづらさ

今の日本では「男女で家事や育児を分担する」といった考えが、少しずつですが浸透し始めています。

しかし昔は男女で完全に役割が異なったため、男性は仕事さえしていれば良く、家事は全くできない人がほとんどです。

そこで、妻との死別熟年離婚など、自身の身の回りの世話を担っていた妻との別れを経験すると、途端に生活が荒れてしまう人が多くなります

簡単な掃除どころか洗濯や炊事もできないために、栄養バランスの取れた食事の摂取や衛生的な環境を保つことが出来なくなってしまうのです。

また、高齢男性は地域社会から孤立した人が多いと記事冒頭でお伝えしました。

そのため、こうした荒れた生活環境を案じ、助けてくれる人も周囲にいない。

そして荒れ続ける生活環境から、次第に住居はゴミ屋敷と化し飲食物はアルコールに、たまに外へ出るのはギャンブルのため、と徐々に劣悪なものへとなっていくのです。

偶発的なことがきっかけになることも

高齢者の場合、ケガや持病の悪化などから孤立やセルフネグレクトへ陥る危険性も高くなります。

高齢になると、筋力や柔軟性、バランス感覚の低下に伴い判断力の低下などから不慮の事故につながる危険性が高く、骨折や後遺症などを負う重傷の事故へとも繋がりかねません。

そうした事故から身体が痛み、外出が億劫になる身の回りの世話が困難になるといったことも多いのです。

また、高齢者のケガは孤立やセルフネグレクトへの要因となるだけでなく、最悪の場合そのまま孤独死へと至るケースもあります

高齢者の不慮の事故発生件数

引用:消費者庁

上記は高齢者の不慮の事故による死亡者数を表したものですが、高齢者の「飲食物の誤嚥」「転倒・転落」「溺死・溺水」での死亡者数は、交通事故での死亡件数よりも多いという結果になっているのです。

まとめ:高齢者の孤独死を防ぐためにできること


高齢化が進む日本にとって、孤独死は誰にとっても無視できない問題となりつつあります。

孤独死の潜在的要因となる単独世帯の増加や貧困率の上昇、地域社会の希薄化など、これらは個人の心がけで改善できる問題ではありません

そして、記事内でご紹介した孤独死の事例では遺体の損傷が軽く、大がかりな特殊清掃を必要としないものでした。

しかし、孤独死の大半は遺体の損傷がかなり進行し、異臭や体液の漏洩が元となり発見されています。

孤独死は1人寂しくこの世を去るだけでなく、死をもって人の尊厳を傷つけてしまう大変悲しい亡くなり方なのです。

我々が実際に目の当たりにした孤独死の現状を発信することにより、個々が意識を持つことで孤独死が少しでも減ることを祈っています。

林商会では遺品整理や特殊清掃を通じ、お客様に寄り添い親身に対応させていただくことで、どのような状況下においてもお客様の不安を少しでも取り除くことができるよう日々取り組んで参りました。

そして、株式会社林商会では「特殊清掃」「消臭」「遺品整理」「遺品供養」など、孤独死に関する様々な手続きを一括でご依頼いただけます。

万が一の際は、24時間無料でご相談頂けますので下記からお気軽にご相談くださいませ。

孤独死全般について詳しくはこちらの記事をお読みください。
孤独死とは?増加の原因や対処・予防方法について

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