高齢化社会が叫ばれる昨今、貧困化や核家族化の進行など様々な要因から、徐々に孤独死の件数は上昇し続け、今や大きな社会問題となっています。
この記事では、高齢者による孤独死の現状について詳しく解説いたします。
孤独死の高齢者が後を絶たない原因や、今後少しでも減らせるよう対策方法もご紹介いたします。
ぜひ最後までお読みください。
孤独死による特殊清掃・遺品整理のお困りごとがある方は林商会にご相談ください。
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目次
東京都では孤独死の高齢者が15年で2.5倍以上に増加

引用:国土交通省
上記は国土交通省による東京都区部で発生した孤独死の統計データです。
2003年には孤独死した高齢者(65歳以上)の数が1,441人でしたが、2018年には3,867人と2.5倍以上に増加しておりました。
全国規模で考えると毎年かなり孤独死が発生していることがわかります。
また孤独死の約3割は65歳以下の世代であるのも現実です。
孤独死の高齢者を招く原因は?
1人暮らしである
孤独死の一番の理由として、「一人暮らし」が挙げられます。
昔から一人で生活している人のほかに、高齢になると家族と死別して一人で生活を余儀なくされてしまった人もいるでしょう。
若い頃であれば体調を崩しても何とか回復できたかもしれませんが、高齢になると重症化してしまうことや、困ったときに助けを求められず亡くなっていくケースもあります。
また1人だからと手を抜いた不摂生な生活をしていると、より体調を崩すリスクも高まります。

国立社会保障・人口問題研究所の公表する「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」では、2020年に65歳以上の一人暮らし世帯が7,078世帯なのに対し、2050年には10,839世帯になるとされています。
1人暮らしの65歳以上だからといって必ずしも孤立しているわけではありませんが、割合が増えるということは孤独死の割合も一定数増えるでしょう。
経済力が不足している
経済力の低下は、高齢者の孤独死へ繋がる大きな要素となります。

上記は高齢者の貧困率の推移と今後の見通しを示したグラフです。
2009年で9.4%だった高齢者全体の貧困率は、緩やかに上昇し続け2030年には15%を超える見通しとなっています。
貧困が高齢者の孤独死の原因となる理由は下記が考えられます。
- 治療費が払えず適切な治療を受けることができない
- 有料介護施設へ入所できない
- エアコンが設置できない、極度の節約でエアコンをつけないことで熱中症となる
- 必要最低限の食事を摂れず体調を崩す
今後も比較的安価で利用することのできる特別養護老人ホームの入所条件は引き上げられ、さらに今後は高齢者における医療費の削減も検討されています。
そこへ、年金受給額の引き下げが追い打ちをかけることで、日常生活に支障をきたした結果、誰にも看取られることなく孤独に息を引き取る孤独死へと追いやられるでしょう。
また、今後年金受給開始年齢が引き上げられる可能性も拭えないため、経済力不足の高齢者が増える危険性もあるでしょう。
男性は要注意!他人との関わりが少ない
高齢になり仕事を退職すると、社会との関わりが減ることは目に見えているでしょう。
昨今はご近所付き合いが希薄となっているため、さらに人との関わりが減少していると言えます。
他人との関わりが少ないと、何かあった時に気付いてもらえない可能性が高く、孤独死のリスクも上がります。
また、孤独死の件数を性別で比較すると、圧倒的に男性の件数が多いとされているのをご存じでしょうか。
その理由として、高齢男性の近所付き合いの少なさが挙げられます。

引用:内閣府
現代の高齢者は、男性は外で仕事をし女性は家を守るといった思考が強く、家のことや近所付き合いの経験のない人が多い傾向にあります。
そのため、社会とのつながりが無くなったとき、地域社会にも馴染むことができず結果孤立してしまう高齢者が後を絶たちません。
周りに助けを求める相手がないために最終的に孤独死するケースが多く発生しています。
孤独死の原因について詳しくはこちらの記事をお読みください。
▼孤独死が起こる原因と対策
弊社で扱った高齢者による孤独死の事例

遺品整理の依頼のはずが…
我々のもとに、故人の息子だという男性から「母が亡くなったので遺品整理を依頼したい」との連絡が入りました。
後日、遺品整理のため依頼主である男性と、故人が生前に住まれていた団地へ。
室内に残る遺品の整理を依頼主と共に行っていたのですが、特殊清掃も請け負うことの多い我々は、そこで若干の違和感を感じたのです。
「もしかして、お母様はご自宅内で亡くなられたんですか?」
「ええ、そうなんです。実はその辺りで…。」
そう指された先には、500円玉よりも少し大きいサイズほどの若干の体液がありました。
話を聞くと、故人は自宅内で亡くなり死後1週間程が経った頃に発見されたが、高齢だったためか体液の流出や異臭は少なく、汚染度が低いと判断し遺品整理のみを依頼してきたとのこと。
実は、孤独死があったからと言って特殊清掃は必ずしも行わないといけないといった法律などはありません。
しかし、少ないとはいえ若干量の体液はあったため、念のため消毒作業を行いました。
明確には『孤独死』ではなかった
死後1週間も経過してから発見された依頼主の母。
故人はこの家で、夫婦2人暮らしをしており明確には孤独死ではなかったと言います。
故人の夫は数年前から重度の認知症を患っており、日頃からその介護を妻である故人が行っていたそうです。
今回の依頼主である故人の息子を含め、家族とは別居。
介護は忍耐と体力を要すると言いますが、自身も高齢だった故人にとって夫の介護での負担は相当なものだったのでしょう。
ところが、夫の認知症は日を追うごとに悪化、それに伴い故人だけで介護を行うことが困難になり、週に一度だけホームヘルパーを利用され始めたそうです。
ヘルパーは訪問前に必ず電話などで故人へ連絡を取っていたそうなのですが、「念のため」と故人から家の合鍵を預かっていたそうです。
しかしある日、ヘルパーが普段通り訪問前に電話をしたが故人との連絡が取れず、自宅に到着してからも連絡がなかったため、預かっていた合鍵で入るとそこには既に亡くなった故人の姿がありました。
認知症の夫は妻の遺体と共に衰弱した状態で発見
こうして、ヘルパーに死後1週間で発見された故人ですが、同居していた認知症の夫は奇跡的に無事保護されたそうです。
この時の、夫の認知症の症状はかなり深刻で、自分自身の身の回りの世話どころか、飲食物を自身の意思で摂取することが困難なほどでした。
そのため夫は発見時、なんとか一命は取り留めていたものの、一切の飲食物を摂取していなかったため、かなり衰弱した状態で発見されたと聞きました。
今回の事例では、たまたまヘルパーが合鍵を所持していたから夫は無事に保護されましたが、少しでもタイミングが違えば夫婦共に亡くなっていた可能性も高く、老々介護の危険性を痛感した事例でした。
台所と洗面所の間で妻は亡くなっていた
故人が亡くなった家は、3DKの典型的な団地の間取り。
DKのある部屋のキッチンの隣辺りから洗面へ通じており、故人はキッチンと洗面の間で亡くなっていました。
亡くなった場所がキッチンや洗面ということから、きっと故人は自身を労わる余裕もなく亡くなる最期の瞬間まで、献身的に夫の世話や家事をしていたのでしょう。
夫の認知症が発覚してからも、妻である故人はほとんどご自分で夫の介護をされていたと聞きました。
介護をするには想像以上の体力や負担を要します。
彼らがなぜ、介護施設への入所をしていなかったのか詳しい理由はわかりませんが、老いた身体で行う介護が故人への身体的負担になっていたことは明らかです。
仲睦まじい仲だった夫婦の思い出の品
室内に残った遺品を整理していると、夫婦が若かったころの思い出の品が多く見つかりました。
旅行先で撮ったとされる2ショットの写真、2人の似顔絵、若いころに乗っていたロードバイクなど…。
その数はあまりにも多く、夫婦の仲の良さが伺えます。
見ているだけで、暖かい気持ちになる素敵な夫婦の思い出を、大切に整理させていただいたことを今でも鮮明に覚えています。
そして、故人の遺体発見時、かなり衰弱していた夫も我々が遺品整理に伺った頃にはかなり快復されていたらしく、依頼主である息子様夫婦のもとに引き取られるとの話でした。
孤独死の事例について詳しくはこちらの記事をお読みください。
▼特殊清掃員がみた孤独死の事例とは
特殊清掃の現場から感じた孤独死

定年退職後の生き方
高齢者の孤独死や孤立は、リタイア後の人生の過ごし方に左右されると感じています。
それは、我々が孤独死現場の特殊清掃を通して感じたのが、孤独死された人や孤立していた高齢者には、外の世界との交流を自発的に持たなかった人が多いという点からです。
現役時代は仕事や子育てなどを通して、外の世界との交流があることは必然的なことです。
しかし、退職後・子供の成人後まで外との交流を保つには自発的な行動が不可欠となります。
例えば、ゲートボールなど高齢者同士の趣味の会に参加してみる・身体が元気なのであれば高齢者雇用で働いてみる、などです。
リタイア後の人生では、一度孤立し始めると社会のコミュニティに戻ることが難しくなります。
そうして孤立してしまうと、日々に楽しみや希望が持てない・外に出ることがないために体力の衰えが著しくなるなどの心身への不調から、セルフネグレクトへと繋がり、孤独死される高齢者が多いのです。
高齢独身男性の生きづらさ
今の日本では「男女で家事や育児を分担する」といった考えが、少しずつですが浸透し始めています。
しかし昔は男女で完全に役割が異なったため、男性は仕事さえしていれば良く、家事は全くできない人がほとんどです。
そこで、妻との死別や熟年離婚など、自身の身の回りの世話を担っていた妻との別れを経験すると、途端に生活が荒れてしまう人が多くなります。
簡単な掃除どころか洗濯や炊事もできないために、栄養バランスの取れた食事の摂取や衛生的な環境を保つことが出来なくなってしまうのです。
また、高齢男性は地域社会から孤立した人が多いと記事冒頭でお伝えしました。
そのため、こうした荒れた生活環境を案じ、助けてくれる人も周囲にいない。
そして荒れ続ける生活環境から、次第に住居はゴミ屋敷と化し飲食物はアルコールに、たまに外へ出るのはギャンブルのため、と徐々に劣悪なものへとなっていくのです。
偶発的なことがきっかけになることも
高齢者の場合、ケガや持病の悪化などから孤立やセルフネグレクトへ陥る危険性も高くなります。
高齢になると、筋力や柔軟性、バランス感覚の低下に伴い判断力の低下などから不慮の事故につながる危険性が高く、骨折や後遺症などを負う重傷の事故へとも繋がりかねません。
そうした事故から身体が痛み、外出が億劫になる・身の回りの世話が困難になるといったことも多いのです。
また、高齢者のケガは孤立やセルフネグレクトへの要因となるだけでなく、最悪の場合そのまま孤独死へと至るケースもあります。

引用:消費者庁
上記は高齢者の不慮の事故による死亡者数を表したものですが、高齢者の「飲食物の誤嚥」「転倒・転落」「溺死・溺水」での死亡者数は、交通事故での死亡件数よりも多いという結果になっているのです。
孤独死を防ぐ対策

今後1人暮らしの高齢者が増加していくことは仕方がないことですが、少しでも孤独死が予防できるよう対策をしていきたいですよね。
孤独死を防ぐための対策は大きく分けて以下の4つとなります。
- 家族や近隣住民で頻繁に様子を確認する
- 地域の行事へ参加する
- 民間の見守りサービスを利用する
- 介護施設へ入居する
家族や近隣住民で頻繁に様子を確認する
人との関わりが少ないと孤独死に陥りやすいので、定期的に家族や近隣住民で様子を伺いましょう。
直接話せるに越したことはありませんが、難しい場合は郵便受けに郵便物が溜まっていないかや、定期的にスーパーなどに出かけているか確認する方法もあります。
地域の行事へ参加する
勤めていた会社を退職した後は、地域でのつながりが大切となります。
地域のボランティアやお祭りに参加すると参加者同士で安否を確認でき、気にかけるきっかけとなるでしょう。
身近に一人暮らしの高齢者がいる場合は、参加しないか声をかけてみると良いかもしれません。
民間の見守りサービスを利用する
民間で運営されている見守りサービスを利用するのも一つの手でしょう。
見守りサービスには、何か異常があった時に本人がボタンを押すことでセキュリティ会社に通知が届く接触型、監視カメラやセンサーなどの設置により見守る非接触型、食事を届けるなど直接高齢者のもとへ訪れる対面型があります。
利用者に合わせて選ぶとよいでしょう。
見守りサービスをもっと知りたい方は以下の記事をご覧ください。
▼孤独死を防ぐ見守りサービス
介護施設へ入居する
自宅で生活するのが困難になってきたり、こまめに見守りする必要があったりする場合は、介護施設へ入居する方が適しているかもしれません。
介護施設ではスタッフにより生活のお世話や見守りがしてもらえるほか、入居者同士の関わりもあります。
誰かがそばにいた方がよいと感じる高齢者の場合は検討してみてください。
まとめ:高齢者の孤独死を防ぐためにできること
高齢化が進む日本にとって、孤独死は誰にとっても無視できない問題となりつつあります。
孤独死の潜在的要因となる単独世帯の増加や貧困率の上昇、地域社会の希薄化など、これらは個人の心がけで改善できる問題ではありません。
そして、記事内でご紹介した孤独死の事例では遺体の損傷が軽く、大がかりな特殊清掃を必要としないものでした。
しかし、孤独死の大半は遺体の損傷がかなり進行し、異臭や体液の漏洩が元となり発見されています。
孤独死は1人寂しくこの世を去るだけでなく、死をもって人の尊厳を傷つけてしまう大変悲しい亡くなり方なのです。
我々が実際に目の当たりにした孤独死の現状を発信することにより、個々が意識を持つことで孤独死が少しでも減ることを祈っています。
林商会では遺品整理や特殊清掃を通じ、お客様に寄り添い親身に対応させていただくことで、どのような状況下においてもお客様の不安を少しでも取り除くことができるよう日々取り組んで参りました。
そして、株式会社林商会では「特殊清掃」「消臭」「遺品整理」「遺品供養」など、孤独死に関する様々な手続きを一括でご依頼いただけます。
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孤独死全般について詳しくはこちらの記事をお読みください。
▼孤独死とは?増加の原因や対処・予防方法について