葬儀で香典に使用する薄墨。
一周忌でも薄墨を表書きに使用すると思っている方が意外と多いのですが、実は薄墨は使用しないのがマナー。
それは、「香典を入れる不祝儀袋になぜ薄墨を使用するのか」の理由を知れば納得できるはずです。
記事内ではそのほか、一周忌での香典袋の書き方やマナーについても一緒にご紹介します。
一周忌について詳しくはこちらの記事をお読みください。
▼一周忌とは?マナーや準備について解説
目次
一周忌の香典に薄墨は使用しない
香典と言えば薄墨の表書きを思い浮かべる人は多いですが、一周忌の香典には薄墨を使いません。
何故使われないかは、香典の表書きが薄墨になった理由やいつまで使うのかを知れば納得できるでしょう。
そもそも薄墨を使う理由
薄墨を使う理由の根本にあるのは、故人の不幸に対しての悲しみの気持ちです。
墨をすって文字を書いていた時代、香典袋に表書きをするのに悲しみのあまり墨をする気力が持てずに濃い墨が作れなかったり、すった墨に涙がこぼれて薄くなったりしたことが香典の薄墨の由来と言われています。
故人を思う気持ちが墨の色に表れたという説です。
加えて、急いで駆けつけたので墨をする充分な時間がとれなかったのも理由の一つと言われています。
薄墨の由来は諸説ありますが、墨をする習慣が少なくなった現代でも薄墨を用いるのは、悲しみの気持ちを故人や遺族に伝えたいという思いがあるからです。
香典に薄墨を使用するのはいつまで?
一般的に香典に薄墨を使用するのはお通夜と葬儀・告別式です。
最近ではいろいろな事情で、葬儀と同時に初七日を行うこともありますが、その場合は初七日でも使用されることがあります。
これらは事前に日程が決まっているかどうかで区別されています。
事前にわかっていることであればきちんと準備するのがマナーとなるので、葬儀と同時に行わない場合の初七日やそれ以降に行われる四十九日、一周忌では薄墨を使いません。
言い換えれば、突然の悲しい出来事に薄墨が使われ、落ち着いて準備ができる場合には普通の墨が使われるということです。
ただ一方で京都のように薄墨を使わない地域もあります。
住んでいる場所によって違いがあるので、不安な場合は近所の人などに確かめておくといいでしょう。
一周忌の香典袋の書き方
香典にはある程度決まったマナーがありますが、ここでは一周忌に用いる香典袋の表書きの書き方のマナーについて順を追って説明します。
濃墨で表書きを書く
濃墨(こずみ)とは、通常の濃くすった墨のことですが、一周忌の香典袋はこの濃墨で表書きを書きます。
表書きの文字は下記のいずれかです。
・御仏前 ・御佛前 ・御供物料 ・御香料 |
亡くなった方の仏の前に供えるという意味の「御仏前」や「御佛前」が一般的で、さらにお供え物の代わりとして包む「御供物料」や「御香料」を用意することもあります。
書く位置は香典袋の表面、水引より上の真ん中当たりです。
下半分に名前を書く
香典袋の表面、水引より下の部分にはお金を包んだ人の名前を書きます。
個人か夫婦連名、複数連名、団体などで位置が少し違ってきますので注意してください。
① 個人の場合は下段中央にフルネームを書きます。
② 夫婦の場合は主人のフルネームを中央に書き、左に妻の名のみを書き添えます。
③ 複数で連名の場合は左右バランス良く配置します。
④ 記名は最大3名までで、4名以上の場合は中央に代表者1名の氏名を書き「他5名」などと左下に添えます。
⑤ 会社で香典を出す場合は、役職と代表者名を中央にして右側に社名を添えます。
役職と代表者名が縦1行に書き切れない場合は役職も右側に。
⑥ 職場やグループなどの場合は、団体名とその下に一同と入れます。
この場合、別紙に一同の名前を書いて香典袋の中に入れると親切です。
中袋(内袋)の書き方
ほとんどの香典袋には中袋がありますが、中袋の表面には包んだ金額を、裏面には包んだ人の住所と氏名をそれぞれ縦書きで記入します。
金額は旧字体を使用し、先頭にお金を意味する「金」の文字を入れます。
<旧字体:例>
壱(いち) 弐(に) 参(さん) 伍(ご) 拾(じゅう) 阡・仟(せん) 萬(まん) 圓(えん) |
5万円の場合は縦書きで「金 伍萬圓」となります。
ただし、中袋に横書き用の金額記入欄がある場合はアラビア数字で50,000と記入します。
なお、金額の後ろに「也」の文字を入れる書き方もありますが、也は15銭、50銭など円以下のお金が無いことを意味するもので、小銭を入れることのない香典ではとくに書く必要はありません。
裏面の住所と氏名は、通常の手紙の封筒の裏に書くのと同じように左寄りに縦書きします。
一周忌で気になる他のマナーは?
香典袋は準備できましたが、他にも気を付けなければいけないマナーがあることを知っておきましょう。
包むお札についてのマナー
香典袋に包むお札には、入れる向きと金額にマナーがあります。
お通夜や葬儀・告別式では、お札の肖像が裏返しになるように入れますが、一周忌では上の画像にように、肖像が中袋の表面側で、なおかつ封筒の口に近い方にくるように入れるのがマナーです。
また、2枚以上のお札を包む際にはきちんとお札の向きを揃えることも忘れないように注意しましょう。
金額面では縁起が悪いとされる「4」「9」を避けるため、4千円や4万円、9千円や9万円にならないようにしましょう。
さらに割り切れる偶数は嫌われる傾向にあるため、複数名で包むなどでやむを得ない場合は、4万円なら1万円札を3枚と五千円札を2名などお札の枚数を工夫します。
渡し方のマナー
一周忌の香典は、裸のままカバンに入れたり手で持って歩いたりせず、袱紗(ふくさ)に入れて持参するのがマナーです。
渡すタイミングは会場に到着後法要が始まる前までに、「心ばかりですが、仏前にお供えください」と一言添えながら施主に渡します。
受付や記帳台がある場合は、記帳を済ませた後に受付で香典袋を渡します。
一周忌のお供えについても知りたい方はこちらの記事をお読みください。
まとめ
一周忌の香典袋の表書きには薄墨を使わないのがマナーです。
突然に訪れるお通夜や葬儀・告別式とは違い、充分に準備する時間があるからです。
また、同じ香典でも表書きに書く言葉やお札の向きなどの作法も変わるので、渡される側が気持ちよく受け取れるよう細かなところにも気を遣ってください。