仏教の場合、葬儀や法事ではほとんどの人が自分の数珠を持参します。
数珠の種類や宗派によって持ち方が異なるので、この記事で正しい持ち方を確認しましょう。
また、記事の後半では数珠の使い方に関するマナーも解説します。
よくある質問にもお答えするので、恥をかかないためにもマナーを心得ておきましょう。
目次
数珠とは
数珠とは、念仏を唱える際に何回唱えたかを数えるための道具です。
一説には、数を数える珠(たま)で「数珠」と呼ばれるようになったと言われており、念仏に用いる珠との意味からとって「念珠(ねんじゅ)」とも呼ばれます。
珠が連なる様は、仏と人との縁をつなぐ力をもっていると考えられ、故人への敬意や哀悼を表すために数珠を持つとされています。
仏教以外の宗教を信仰している場合は数珠を持っていない方がいるかもしれませんが、仏教式の葬儀や法事に参列する際は数珠を持参したほうがよいでしょう。
数珠の種類
数珠には略式数珠と本式数珠があり、それぞれに男性用・女性用があります。
略式数珠
略式数珠とは、宗派に関わりなく使える実用的な数珠で「片手数珠」とも呼ばれます。
珠の数は本式数珠の半分の54珠や、4分の1の27珠のほか、22珠、20珠、18珠などもあります。
略式数珠は1つの珠の大きさが、男性用は10~12mm、女性用は6~8mmが一般的です。
本式数珠
本式数珠とは、各宗派が正式であると認めた108珠仕立ての格式高い数珠を指します。
108という数字は人間の煩悩の数を表し、身を護るなどの功徳がある数とされています。
本式数珠は数珠を左右に広げたときの大きさが、男性用は九寸(約27cm)~一尺二寸(約36cm)、女性用は八寸(約24cm)が一般的です。
略式数珠の持ち方
基本は、左手の4本の指を輪の中に入れ親指で軽く押さえるようにして持ちます。
数珠を左手で持つ理由は、左手が仏様の清浄な世界、右手が現世の人間が住む不浄の世界を表していることに由来しているようです。
合掌するときは、以下の2通りの持ち方があります。
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どちらでも問題ないので、持ちやすいほうを選びましょう。
本式数珠の持ち方【宗派別】
本式数珠は各宗派の考え方が、数珠の呼び名や形式に反映されています。
数珠の持ち方にも違いがあるので、葬儀や法事などでのマナーとして覚えておきましょう。
浄土宗
【数珠の持ち方】
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【合掌するとき】
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浄土宗は、法然を宗祖とする宗派で総本山は知恩院、ご本尊は阿弥陀如来などです。
お念仏の宗派とも呼ばれ、「南無阿弥陀仏」と念仏をひたすら唱えることで、阿弥陀如来の救いによって死後に極楽浄土に生まれることを願います。
「南無阿弥陀仏」の南無は、相手への最大の尊敬や絶対的な信頼を表現した言葉で、尊敬する阿弥陀如来様という意味があり、法然上人は一日に6万回の念仏を唱えたと言われています。
数珠は、「荘厳数珠」「修法数珠」「日課数珠」の他、大勢で輪になり繰る巨大な「百万遍数珠」など特殊な数珠があります。
一般の檀家・信徒が使用する日課数珠は、珠の数は108ではありません。
2つの輪を交差させて1つに繋いだような独自の形をしているのが特徴です。
念仏の数をたくさん数えるのに適した形になっており、その形状から二連数珠、環貫数珠などとも呼ばれています。
浄土真宗
【数珠の持ち方】
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【合掌するとき】
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浄土真宗は、親鸞を宗祖とする宗派で総本山は西本願寺、ご本尊は阿弥陀如来のみです。
日本で一番信徒が多い宗派で、阿弥陀如来を信じて全てをゆだねることで、煩悩を持った人でも死後に阿弥陀如来の極楽浄土に生まれることができるという教えです。
「南無阿弥陀仏」を「なもあみだぶつ」と唱えますが、これは願掛けのセリフではなく、阿弥陀如来に対する感謝を意味します。
数珠は、男性が略式数珠を使い、女性は108珠の数珠を二重にして使います。
煩悩を持っていても極楽浄土に生まれることができるという考えから、煩悩を消すために唱えた念仏を数える数珠にこだわりがありません。
また、房が数珠を繰ることができないとされる「蓮如(れんにょ)結び」なのも、同じ理由からです。
真言宗
【数珠の持ち方】
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【合掌するとき】
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真言宗は、空海を宗祖とする宗派で総本山は高野山金剛峰寺、ご本尊は大日如来などです。
空海が、唐(現在の中国)で学んだ密教を基盤としている宗派で、宇宙の本体であり絶対の真理である大日如来と一体化することを目指して修行します。
数珠は、親玉、四天玉(四菩薩)の他、108珠あり二重にして使います。
他の宗派に比べ数珠を重要視しており、4本の房には弟子珠5つずつの計20珠と露珠がついているのが特徴的です。
日蓮宗
【数珠の持ち方】
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【合掌するとき】
▼故人のための法要を行うとき
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▼お経を唱えるとき
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日蓮宗は、日蓮を宗祖とする宗派で総本山は久遠寺、ご本尊は大曼荼羅などです。
法華経信仰による仏教の宗派で、宗祖の名前がそのまま名称になっています。
釈迦の言葉をまとめたお経の数は、8万4千と言われていますが、その中でも、「法華経(妙法蓮華経)」は唯一最高の経典だと考え、日蓮宗がもっとも大切にしている教えです。
尊敬の意を込めた「南無」と「法華経」を合わせた「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」という題目を唱えることで自ずと悟りが得られ、全ての人々が成仏できると説いています。
数珠は、108珠の数珠を二重にして使います。
日蓮宗では正式な数珠を使用することを重んじており、2つの親玉からはそれぞれ2本、3本の房が出ているのが特徴です。
曹洞宗
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【合掌するとき】
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曹洞宗は、道元を宗祖とする宗派で総本山は永平寺、ご本尊は釈迦如来などです。
坐禅の実践で得る心身のやすらぎが、そのまま仏の姿だと自覚することにあるという考え方があり、座禅を修行の中心としていることから「禅宗」とも呼ばれています。
壁に向かってひたすら禅を組むことで自分の心と向きあい、自分の中にある仏心を見出すことが目的にあります。
二重にした数珠に、金属の輪がついた108珠の数珠を使います。
特に念仏よりも座禅などの修行を重んじる傾向があるので、他の宗派ほどあまり数珠にこだわりがなく、数珠の作りはシンプルで親玉は1つ、房には弟子玉もありません。
しかしながら、数珠を持つことで煩悩を消し去って身を清めるご利益があると信じられており、本式数珠を持つ檀家・信徒が多いです。
真宗大谷派
【数珠の持ち方】
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【合掌するとき】
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真宗大谷派は、親鸞を宗祖とする宗派で総本山は東本願寺、ご本尊は釈迦如来です。
浄土真宗の宗派の1つで、基本的な教えは浄土真宗本願寺派と同じですが、「南無阿弥陀仏」を「なもあみだぶつ」ではなく「なむあみだぶつ」と唱えます。
煩悩を持った人でも死後に阿弥陀如来の極楽浄土に生まれるという考え方から、数珠の作りにこだわりが少なく、房が数珠を繰ることができない「蓮如(れんにょ)結び」になっています。
臨済宗
【数珠の持ち方】
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【合掌するとき】
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臨済宗は、栄西を宗祖とする宗派で総本山は妙心寺(妙心寺派)、ご本尊は釈迦如来などです。
座禅を修行の中心とした「禅宗」ですが、ひたすら座禅に徹する曹洞宗に対し、臨済宗では禅問答で師匠から弟子に悟りを伝達する「法嗣(はっす)」を重んじています。
数珠は、108珠の数珠を二重にして使います。
念仏よりも座禅などの修行を重んじるため、数珠にこだわりが少なく数珠の作りは、親玉が1つ、房には弟子玉もないシンプルな物です。
天台宗
【数珠の持ち方】
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【合掌するとき】
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天台宗は、最澄を宗祖とする宗派で総本山は比叡山延暦寺、ご本尊は釈迦如来などです。
日本仏教の母山と呼ばれる比叡山延暦寺を総本山とする天台宗は、浄土宗、浄土真宗、臨済宗など日本の主要仏教宗派の始祖が修行を積んでいたことでも有名です。
阿弥陀如来の他、釈迦如来や薬師如来、観世音菩薩など複数の本尊を祀っていますが、これは、法華経、密教、禅、念仏など、さまざまな教えを取り入れているためです。
数珠は、108珠の数珠を二重にして使います。
主珠の平玉はそろばん珠のような形で、房には、20珠の平珠と10珠の丸珠と露珠が付いています。
特徴のある数珠ですが、本式数珠を使うのは寺院や熱心な檀信徒のみ。
一般の人は略式数珠や、二連の振り分け数珠を使います。
創価学会
【合掌するとき】
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創価学会は、法華経系の在家仏教の団体を指します。
名前にある「創価」とは「価値創造」のことを意味していて、価値の中心は生命の尊厳の確立。
さらには、「世界の平和」の実現と「万人の幸福」を目標としています。
数珠は、108珠で白房がついています。
創価学会の数珠専門店で購入されることを推奨しています。
数珠の使い方に関するマナー
お通夜や葬儀に参列する際は、以下3点に注意しましょう。
数珠を他の人と共有しない
例え家族間であっても親しい友人であっても、数珠の貸し借りはしないのがマナーです。
数珠は本人の分身や魂を表すものでお守りの役割もある仏具です。
また、数珠は念珠ともいい、これまで手を合わしていた時の個人の念が込められています。
使うほどに個人の数珠になっていくため、自分以外の人に渡すのはよくないのです。
人から借りるくらいなら数珠なしで葬儀へ参列した方が良いとされていますが、どうしてもという場合は、葬儀会場の人に聞いてみると貸し出し用の数珠があるかもしれません。
もしくは近くに100均やコンビニがあれば売っている可能性もあるので確認してみてください。
数珠を慌てて取り出さない
焼香台の前で慌てて数珠を取り出すのはあまり良くないことです。
焼香が必要なお通夜や葬儀などでは最初から最後まで数珠は左手に付けておきましょう。
焼香の順番待ちで座っているときは左手首にかけておき、歩くときや列に並んでいるときは房を下にして左手で持ち歩きます。
焼香で合掌する際は、左手のみにかけても両手にかけてもどちらでも構いませんが、焼香が済んだらまた左手で数珠を持つのがマナーです。
数珠を雑に扱わない
お通夜や葬儀などで、ときおり間違った数珠の扱い方をしている人を見かけます。
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これらはすべてマナー違反です。
数珠は故人や遺族に対する敬意を表す法具だということを忘れてはいけません。
雑な扱いはせず、席を離れるときはバッグやポケットに入れて持ち歩いたり、席取りに使いたい場合はハンカチの上に置いたりするなどして大切に扱ってください。
数珠の持ち方・使い方のよくある質問
ここからは、数珠の持ち方や使い方のよくある質問にお答えします。
お焼香のときの数珠の持ち方は?
お焼香のときは、焼香台の前まで進んだら僧侶、遺族、遺影に一礼し、数珠を左手にかけます。
焼香が終われば数珠を両手にかけて合唱し、僧侶、遺族に一礼して席に戻ります。
お通夜ではいつから数珠を持つ?
お通夜では、着席したときに数珠を持ちましょう。
先述の通り焼香台の前で慌てて取り出すことのないよう、注意してください。
数珠の持ち方は女性と男性で変わる?
数珠の持ち方は、女性も男性も基本は同じです。
性別にかかわらず、数珠の房を下にして左手で持ちましょう。
まとめ
数珠の使い方をマナーとともにご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
数珠には本式数珠と略式数珠があり、略式数珠は宗派を問わず使えることがわかりました。
また、略式数珠は男性用と女性用を間違えなければどれを選んでも良いので、お気に入りを見つけられそうです。
数珠は原則左手で持つなど数珠のマナーはたくさんありますが、いざという時に恥をかかない、かつ失礼にあたらない数珠の使い方を覚えてください。
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