三回忌や法事の会食の場で行われる挨拶と献杯。
献杯の挨拶は亡き故人との縁を大切にする礼儀でもあるので、挨拶の流れや文言も知っておきましょう。
また施主の家族以外の方が献杯することも多いので、急に頼まれた時の為に注意しておきたい言葉やマナーについても解説します。
三回忌について詳しくはこちらの記事をお読みください。
▼三回忌とはどんな法要?基本的なマナーについても紹介
目次
三回忌の献杯の挨拶とは

三回忌とは、故人が亡くなってから満2年の日に行う法要のことをいいます。
最近では命日の当日ではなく、家族や親族、故人と縁のあった友人や知人の都合に合わせて“命日前の週末”に行うことも多くなってきました。
三回忌では、故人を偲ぶために献杯の挨拶を行うのが慣わしです。
三回忌の献杯とはどのように行うのでしょうか?
献杯の挨拶の意味や誰が行うものなのか、乾杯との違いについて、以下にまとめてみました。
献杯の挨拶の意味
献杯の挨拶は、三回忌の法要後に開かれる会食の食前に行われます。
献杯には、亡くなった人に対する敬意を示して杯を捧げるという意味が込められています。
故人を偲んで、悼むために厳粛に行われるものです。
また、故人が亡くなったあとも、その縁を大切にしながら、残された者で共に助け合い生きていくという前向きな意味も込められているのです。
献杯の挨拶は誰がするの?
三回忌の献杯の挨拶に「誰が行うべき」という厳格なルールは存在しません。
ただ、献杯の挨拶の前に施主の挨拶の時間が設けられていることがほとんどなので、施主の家族以外の人が献杯の挨拶を行うことが多いようです。
施主の家族以外の人とは、例えば故人の兄弟や縁の深かった友人、知人、会社の上司などです。
故人の兄弟や友人などに献杯の挨拶を頼む際、なるべく早めに依頼をしておくことが肝心です。
献杯は短い挨拶であるとはいえ、厳粛な場で行われるものです。頼まれた人がしっかり準備できるよう配慮が必要です。
三回忌の日程が決まった時点で、案内の送付と同時に依頼するのが良いでしょう。
乾杯と献杯の違い
乾杯と献杯は似たような言葉ですが、どのような違いがあるのかご存知ですか?
乾杯は、基本的にめでたい場での食事の前に行われるものです。
「乾杯」という大きな掛け声とともに、参加者たちはお互いのグラスの音を鳴らして打ち付け中身を飲み干します。
その後、拍手が起こったり、賑やかな雰囲気になったりして会食が始まります。
一方、献杯は法要などの場で、故人を偲ぶために行われる厳粛なものです。
「献杯」の掛け声は落ち着いた声量で行われ、参加者たちは、顔を少しうつむき加減にして杯を交わします。
このとき、乾杯と違ってグラスを打ち付けて、音を鳴らしたり拍手をしてはいけません。
グラスを高く掲げることはせず、胸ほどの高さで献杯を行い、中身は一気に飲み干しません。
このように献杯は、厳かな雰囲気で静かに執り行われます。
三回忌の献杯・挨拶の流れ

親族や友人の三回忌に参加することになった際、突然献杯の挨拶を頼まれることもあります。
突然依頼されても慌てないよう、献杯の挨拶での流れについて学んでおきましょう。
基本的な献杯の挨拶の構成は以下の通りです。
・参列者へのお礼 ・三回忌を迎えた気持ちや故人との思い出話 ・献杯の音頭 |
挨拶に正式な決まり事はないので、故人との関係性やその場の状況に合わせて臨機応変に対応していくと良いでしょう。
では、具体的にどのようなことを話すのか、またどのような点に注意するべきかなどについてご紹介しておきます。
参列者へのお礼
まず一番最初は、参列していただいた方へのお礼を述べることが礼儀となります。
例えば、
「本日は皆さま、お忙しい中御足労いただきありがとうございます。
おかげさまで三回忌の法要を無事に終えることができました。」
「本日は、故〇〇を偲ぶためにご多用のところお越しいただきましてありがとうございます。
皆さまとお会いでき、〇〇も安心していることと思います。」
などがお礼の文例です。
冒頭で、忙しい合間を縫って参列して下さった方々への感謝の意をお伝えすることが大切です。
三回忌を迎えた気持ちや故人との思い出話
お礼の次は、三回忌を迎えた思いや、参列してくださった方々と共有できるような故人との思い出話を手短に話しておくのも良いでしょう。
例えば
「故人はお酒の好きな人でした。
本日は故人を思い出しながら、皆さんとお酒を楽しめたらと思っています」
「故人は賑やかな人でした。
本日は皆さまと、楽しく故人のお話ができたらと考えております」
などと話してみるのも良いでしょう。
参列者が少しでも故人のことを思い出し、温かい気持ちになれるような挨拶だと素敵です。
献杯の音頭
挨拶の後に、献杯の音頭をとります。
その際は、必ず故人の遺影や位牌の方へ身体を向けて行わなければなりません。
まずは、献杯の挨拶をしている人が故人の遺影や位牌の方を向き、合わせて参列者も同じ方へ向きます。
その後「では、献杯の音頭をとらせていただきます。献杯」と、落ち着いた声量で献杯の声を掛けます。
三回忌法要は近しい親族や知人のみで行われることが多いため、あまり形式にこだわる必要はありません。
ただし、和室であれば座ったまま献杯を、洋室であれば立ち上がってから献杯を行うことが一般的とされています。
もしも、立ち上がってから献杯をしたい場合は「恐縮ではございますが、献杯のご唱和のためご起立願います」と先に一言添えるようにしましょう。
献杯の挨拶の文例

それでは、実際にどんな献杯の挨拶をするか文例をみてみましょう。
献杯の挨拶を任された人が、親族の場合と知人の場合に分けてご紹介します。
いくら親しい間柄といえども、献杯の席で感傷に浸って長々と話してしまうのは厳禁です。
参列者が献杯を待っていることを考慮し、端的にまとめましょう。
親族が献杯の挨拶をする場合
文例1
故人の兄、〇〇です。 本日は皆さま、お忙しい中御足労いただきありがとうございます。 おかげさまで三回忌の法要を無事に終えることができました。 本日は、皆さまと楽しく故〇〇のお話ができたらと考えております。 では皆さま、御着席のままで結構ですので、献杯の音頭をとらせていただきます。献杯 |
故人の知人が献杯の挨拶をする場合
文例2
故人の友人の〇〇と申します。 本日は、故〇〇を偲ぶためにご多用のところお越しいただきまして誠にありがとうございます。 皆さまとお会いでき、〇〇も安心していることと思います。 〇〇は大変明るい人柄でした。 本日は、お集まりいただいた皆さんと、〇〇の思い出話を楽しく語らえたらと思っています。 〇〇のご冥福をお祈りし、献杯の音頭をとらせていただきますので、ご唱和願います。献杯 |
知っておきたい三回忌の挨拶のマナー

三回忌は親族や親しい知人のみで行うとはいえ、挨拶には最低限のマナーが存在します。
挨拶は
・長く話しすぎない ・献杯と乾杯の言葉を間違えない ・使ってはいけない言葉は避ける |
の三点に注意が必要です。
ここでは、使ってはいけない言葉について詳しく説明していきます。
忌み言葉
「忌み言葉」は不幸なイメージを連想させるため、使ってはいけません。
具体的には「苦しむ」や「死ぬ」「つらい」「浮かばれない」などの言葉のことを指します。
数字の「四」や「九」も「死」や「苦」なども忌み言葉に当たるので気をつけましょう。
重ね言葉
「重ね言葉」は不幸が何度も重なることを連連想させるため、使ってはいけません。
具体的には「いよいよ」や「ますます」「重ね重ね」「たびたび」「くれぐれも」などの言葉がそれに当たります。
ストレートな表現は避ける
「ストレートな表現」とは、生死を直接表す言葉を指します。
故人への敬意に欠けるため使ってはいけません。
具体的には、「死んだ」「生きる」などの言葉のことを指します。
このような露骨な表現は避け、「逝去」や「永眠」「生前」などに言い換える必要があります。
献杯が終わるまでは料理や飲み物に手をつけない
挨拶する人のマナーではありませんが、全員注意するべきことがあります。
献杯の前に料理や飲み物に手をつける行為は、故人や遺族への敬意が欠如しているとして失礼に当たるので禁物です。
代表の方の献杯の挨拶が終わり、参列者で杯を交わした後にお料理や飲み物をいただきましょう。
参列できない場合の三回忌の手紙の書き方

三回忌などの法要のお誘いを受けたものの、遠方などの事情により参列できないこともあります。
そんなときは、基本的なマナーをしっかり守って欠席の旨の手紙を返しましょう。
ここからは、失礼にならない手紙の書き方について確認しておきましょう。
季節感を現した文面を入れる
まず最初に、季節や天候に合わせた心情などを含めた時候の挨拶を書くことがルールです。
文例1
まだまだ寒い日が続きますが、皆さまお変わりございませんか。 この度は、〇〇様の三回忌にお招きいただきありがとうございます。 大変申し訳ありませんが、当日は出席が叶いませんことをお許しください。 遠方からではございますが、〇〇様のご冥福を心よりお祈りさせていただきます。 本日、心ばかりを添えさせていただきましたので、ご仏前にお供えいただけますと幸いです。 どうぞ皆さま、お身体に気をつけてご自愛ください。 |
例文2
春光うららかな季節を迎え、皆さんいかがお過ごしでしょうか。 さて、お招きいただいた法要についてですが、諸事情のため欠席させていただくことをお許しください。 後日改めて、〇〇様のところへお伺いさせていただきたく思います。 その際は、お参りさせていただけますと幸いです。 ご家族の皆さまのご多幸を、心よりお祈り申し上げます。 |
故人との関係
故人の友人や職場の同僚、または上司など、故人とは親しい関係にあってもご遺族とは面識がない場合があります。
そんなときは、故人との関係性や思い出を簡潔に付け加えておくと良いでしょう。
より一層心のこもった文面になり、温かみのある手紙にすることができます。
欠席の手紙を出す際には、ご遺族を思いやる気持ちを込めて書くことが最も大切です。
まとめ

この記事では、三回忌の献杯の挨拶について詳しく説明しました。
挨拶の基本的な構成やルールを知っておくと、突然お願いされたときにも安心ですね。
献杯には「故人を偲び敬う」という意味が込められているので、お祝い事の際に行う乾杯と混同しないように注意しておきましょう。
また、献杯の挨拶では、自身の考えた文章がマナー違反になっていないか事前にもう一度見直しておくと安心です。
忌み言葉や重ね言葉、ストレートな表現を使わないように注意しましょう。
もしも、三回忌法要のお誘いを断る際には、遺族を思いやる気持ちを忘れずに丁寧な文章で返信することが大切です。
この記事が三回忌法要での献杯の挨拶に悩んでおられた方の参考になれば幸いです。