【相続財産の対象まとめ】保険金は含まれる?税金の課される対象から財産の調査方法までわかりやすく解説

相続対象 アイキャッチ (1)

被相続人の有していたプラス・マイナスの財産は、相続財産として法定相続分に従って引き継がれます。

ただし、条件によっては「相続税のかからない財産」や「遺産分割されない財産」があることを知っていましたか。

今回の記事では、相続財産の対象範囲からケースごとの調査方法まで詳しく解説しています。

目次

【民法】相続財産の対象

相続財産-

まずは相続財産として扱われるもの・扱われないものを解説します。

相続財産として扱われる基準

相続財産として扱われるのは、民法上「被相続人が所有していた」と定義されるすべての財産です。
金銭的な価値を持つプラスの財産だけでなく、弁済の必要があるマイナスの財産も含まれることを踏まえておきましょう。

相続財産として扱われるもの

相続財産として扱われるプラスの財産・マイナスの財産について、それぞれの具体例を紹介します。

プラスの財産

経済的価値があるものはプラスの相続財産となり、下記の4つに分類できます。

不動産・不動産上の権利

  • 宅地
  • 農地
  • 建物
  • 居宅
  • 店舗
  • 借地権
  • 借家権

現金・有価証券

  • 現金
  • 預貯金
  • 株券
  • 貸付金
  • 売掛金
  • 小切手

動産

  • 家財
  • 自動車
  • 船舶
  • 宝石
  • 貴金属
  • 美術品
  • 骨とう品

その他

  • 電話加入権
  • 著作権
  • 慰謝料請求権
  • 損害賠償請求権
  • ゴルフ会員権

マイナスの財産

借金や未払いの税金・家賃などの弁済が必要なものはマイナスの財産になり、下記の3つに分類可能です。

負債

  • 借金
  • 住宅ローン
  • 小切手
  • 買掛金

税金

  • 未払いの所得税
  • 未払いの住民税
  • その他の未払いの税金

その他

  • 未払いの家賃・地代
  • 未払いの医療費

相続財産の中にはインターネット上の銀行や証券口座もあるためあわせて確認しておきましょう。

相続財産として扱われないもの

被相続人の所有していた財産・権利義務の中には、例外的に相続財産に含まれないものがあります。ここでは相続財産として扱われないものの具体例をみていきましょう。

遺族給付

法令等で被相続人と一定の関係がある人に給付される遺族給付遺族固有の権利のため、相続財産としては扱われません。

家賃・株式配当など

賃貸物件や株式などは定期的に収益が発生しますが、相続財産としては扱われません。

発生した収益の受取人を遺産分割協議で取り決めておけばトラブルを防げるでしょう。

一身専属的な権利・義務

本人のみに認められた権利や義務は一身専属的な権利・義務といい、他者に譲渡できないため、相続財産の対象外です。

具体的には次のものが該当します。

  • 年金受給権
  • 国家資格
  • 生活保護受給権
  • 扶養請求権
  • 身元保証人としての地位
  • 使用貸借における借主の地位
  • 本人に起因する罰金

みなし相続財産として扱われるもの

民法上は相続財産でなくても、相続税法上は相続財産としてみなされる財産を「みなし相続財産といいます。

被相続人の経済的・肉体的負担により発生した財産は、被相続人の死亡により相続人に受け取る権利が発生するため、相続財産とみなされ、相続税法上の課税対象です。

具体的には、生命保険金、死亡退職金、個人年金などがみなし財産に該当します。

遺言により免除された債務も、該当する場合があるため注意しましょう。

【税法】相続税の課税対象

相続税の書類

次は相続税の課税対象をみていきましょう。

相続税が課される基準

相続税が課されるのは、民法上の相続財産の中で「経済的価値を金銭で見積りが可能なもの」です。

具体的には「プラスの相続財産からマイナスの相続財産を差し引いた分」が相続税の課税対象に該当します。

ただし、課税対象となるのは民法上の相続財産だけではありません。

相続税法は「税金を負担するのに値する実質的な相続財産に課税する」という考え方に基づき、民法上の相続財産よりも課税対象を広く定義しています。

相続税が課される財産

相続税が課される財産は3つに分けられます。

民法上の相続遺産

民法上の相続遺産には、原則相続税が課されます。

死亡した時点で所有していた財産である預貯金、宝石、土地、著作権など、金銭的な価値があるものが対象です。

みなし相続財産

生命保険金、死亡退職金、個人年金などのみなし財産は、被相続人が生前から保有していた財産ではなく、受取人の固有の財産です。

ただし被相続人の負担の上に成り立つ財産のため、相続税法上は相続財産とみなされ、相続税が課されます。

相続開始前から3年以内に取得した贈与財産

財産の持ち主が生前に贈与した財産についても、相続税法上で課税対象の規定があります。

被相続人が死亡した日から3年以内の生前贈与は、すべて相続財産に加えた上で税額が計算されるため、注意が必要です。

相続税が課されない財産

相続税対象外-

条件によっては相続税が課されない財産もあります。

祭祀財産

先祖を崇拝する墓地や墓石、仏壇、神を祀る道具には、相続税が課されません。

日常的な崇拝ではなく、商品や投資の対象として所有するものについては相続税の対象です。

公益事業に寄付された財産

公益を目的とする事業に使われることが確実な場合は、相続税課税の対象から除外されます。

対象は宗教、慈善、学術などの事業です。

心身障害者救済制度に基づいた給付金

心身障害者制度に基づいた支給金を受ける権利には相続税が課されません。

地方公共団体の条例によって、精神や体に障害のある人やその人を扶養する人が取得する権利が定められています。

生命保険金や死亡退職金の控除部分

生命保険金や退職金などのうち、相続で取得したとみなされる部分については、500万円×法定相続人の数までは相続税の対象ではありません。

幼稚園経営に使用された財産

個人経営していた幼稚園の事業の用に供されていた財産で、相続人の1人が引き続きその幼稚園の経営を行い、かつ一定の要件を満たすものは、相続税が課されません。

損害賠償金や弔慰金

自己責任ではない不慮の事故により死亡した場合、事故を起こした人から遺族に損害賠償金が支払われます。

この補償金は、遺族の精神的苦痛に対する補償として支払われるため、相続財産とはならず、課税対象から除外されます。

会社から受け取った弔慰金も、原則として相続財産とはみなされません。

相続財産を取得しない人が得た贈与財産

相続税は原則相続財産に対してかかるため、そもそも相続財産を取得しなかった人は納税の義務はありません。

遺産分割協議の対象にならないもの

遺産分割協議対象外-

遺産分割協議の対象にならないのは次の3つです。

  • 受取人の決まっている死亡保険金
  • 受取人の決まっている死亡退職金
  • 生前贈与財産

分割できない財産は、遺産分割の際に苦情を申し立てても受け取れません。

遺産分割協議の対象にならない財産がある場合には、受取人と金額を確認しましょう。

分割できない財産は原則として特定の人の財産として扱われるため遺産には含まれませんが、例外的に「特別受益」として取り扱われるケースがあります。

特別受益が適用されるのは、特定の相続人が受け取った財産の金額が極めて高額で、かつその相続人と他の相続人との間に容認できない不公平があるなどの「特別の事情」がある場合です。

相続財産は誰のもの?法定相続分を調べてみよう!

法定相続人の範囲

相続の際は、誰がどの割合で受け取るのかを事前に把握しておくと、スムーズに手続きが進められるでしょう。

ここでは相続人の範囲・割合・確認方法を解説します。

法定相続人の範囲

亡くなった人の配偶者はどんなときでも相続人となり、配偶者でない人は次の順序で配偶者と共に相続人となります。

順位 相続人 補足
第1順位 被相続人の子ども
  • 子どもがすでに亡くなっている場合、その子の直系卑属(子ども、孫など)
  • 子どもも孫もいる場合は、被相続人に近い世代の子どもが優先される
第2順位 父母、祖父母など被相続人の直系卑属
  • 父母と祖父母がいる場合、故人により近い世代の父母を優先する
第3順位 被相続人の兄弟姉妹
  • 兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その子どもが相続人になる

第1順位に該当する人がいない場合には第2順位の人が、第2順位もいなければ第3順位の人が相続人とみなされます。

ただし、相続放棄をした場合は、初めから相続人でなかったとみなされます。

また、内縁関係にある人は相続人に含まれません。

法定相続人の遺産相続割合

法定相続人それぞれが受け取る割合は、次のように定められています。

ケース 相続割合
配偶者と子どもが相続人の場合 配偶者が2分の1、子どもが2分の1を受け取る
配偶者と直系卑属を相続人とする場合 配偶者が3分の2、直系卑属が3分の1を受け取る
配偶者と兄弟姉妹を相続人とする場合 配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を受け取る

子・直系卑属・兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いる場合は、原則として均等に分割して相続します。

ただし、民法に規定されている法定相続分は遺産分割協議がまとまらない場合の相続分であり、必ずしも法定相続分に従う必要はありません。

法定相続人の範囲は戸籍謄本で確認できる!

法定相続人の範囲を確認するには、亡くなった人との関係を調べる必要があります。

実際に確認する場合は、戸籍謄本を利用しましょう。

亡くなった人の出生時から死亡時までの連続した戸籍謄本が必要なため、結婚・本籍地の転居などがあった場合はそれぞれの戸籍謄本を入手します。

戸籍のある市町村で戸籍謄本の発行が可能です。

遠方の場合は、郵送での交付が可能な市町村もあるため、まずは問い合わせてみましょう。

こんなときはどうする?遺産相続の特例

遺言書

遺産相続は家庭によって状況が違うため、遺産相続の特例を知っておくと役に立つでしょう。

代襲相続が発生する場合

相続人になる人(被代襲者)が相続できない場合に、直系卑属が代理で遺産相続するケースを代襲相続といいます。

代襲相続になるのは、相続開始以前に被代襲者が死亡していた場合、相続欠格・相続排除で相続権を失った場合です。

被代襲者が被相続人の子どもか兄弟姉妹の場合に限り、代襲相続できることに注意しましょう。

また被代襲者が一切の相続を放棄する相続放棄していた場合は、代襲相続できないため、注意が必要です。

遺留分が認められる場合

一部の相続人が最低限の遺産を受け取る権利として保証されている遺産割合を遺留分と言います。

遺留分が認められるのは次の相続人です。

相続人 遺留分の割合
被相続人の配偶者や子ども 遺留分算定の基礎になる財産の2分の1
父母など、被相続人の直系尊属 遺留分算定の基礎になる財産の3分の1

相続した財産が遺留分を下回っている場合、他の相続人に遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)を出すと、不足分を受け取れます。

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)の請求方法は次の3つです。

  • 内容証明郵便で、遺留分減殺の意思表示をする
  • 家庭裁判所で遺留分減殺調停を行う
  • 簡易裁判所で遺留分減殺請求訴訟を起こす

まずは内容証明郵便を出し、相手が応じない場合は家庭裁判所、簡易裁判所での請求に進みます。

遺留分減殺請求には1年間の期限があるため、期日を守って請求しましょう。

遺言書がある場合

遺言書がある場合には、記載の通りの遺産分割が基本です。

しかし相続人全員が合意すれば、遺言書の内容とは異なる割合での遺産分割ができます。

遺言の作成方法には、公正証書遺言遺言自筆証書遺言があり、法的な要件を満たさないと無効になります。

公証役場で公証人が作成する公正証書遺言は、費用はかかるものの無効になる心配はありません。

自筆証書遺言はいつでも自筆で作成できますが、無効や改ざんの恐れがあるため注意が必要です。

遺産を受け取りたくない場合

遺産を受け取りたくない場合は、相続放棄をするという選択肢もあります。
すべての遺産相続を放棄できるため、マイナスの遺産が多い場合や事情により何も受け取りたくない場合に選択されます。

相続放棄に必要な書類は以下の通りです。

  • 亡くなった人の戸籍謄本
  • 亡くなった人の住民表
  • 相続放棄する人の戸籍謄本
  • 相続放棄申述書
  • 収入印紙(800円分)
  • 郵便切手

相続放棄の手続きは、相続が開始されてから3か月以内に家庭裁判所への申し立てが必要なため、早めに準備をしておきましょう。

【ケース別】相続財産の調査方法

預金通帳

相続の際は、相続人がどれくらいの財産を所有していたかを調べておきましょう。

ここでは、よくある5つのケースごとに相続財産の調べ方を解説します。

ケース①現預金

自宅の通帳、預貯金証書を確認し、「相続開始時点における残高証明書」や「相続発生前後の取引明細書」を取得しましょう。

金融機関に申請が必要ですが、取引の金融機関が多く大変な場合は司法書士に頼むのもよいでしょう。。

ケース②不動産

自宅の登記識別情報通知や権利証を確認し、法務局で不動産の登記事項証明書を取得します。

複数の不動産を所有しているときは、役所が管理する固定資産課税台帳である名寄帳を申請すると分かりやすいでしょう。

相続人は名寄帳の写しの取得が可能なため、不動産がある市町村の役場で申請します。

ケース③借金

通帳や契約書、請求書などの郵便物、クレジットカードの利用明細から借り入れ状況を調べましょう。

はっきりしない場合は、JICC・CIC・KSCなどの信用情報機関で情報公開の請求をすると、借入状況を把握できる可能性があります。

ケース④保険

保険証券、保険会社からの郵便物を調べます。

保険証券がなくても、口座からの引き落としやクレジットカードの利用明細に記載されている可能性もあるため、チェックが必要です。

該当の保険会社が判明したら、契約情報を照会しましょう。

ケース⑤金融商品(株式・有価証券など)

取引があった証券会社を調べ、取引状況を照会します。

証券会社が判明しなければ、以下に問い合わせると情報を取得できます。

  • 株式管理している信託銀行の株式名簿管理人
  • 証券保管振替機構(ほふり)

【要チェック】調査に必要な書類

相続財産の調査に必要な書類は以下の通りです。

  • 預金通帳
  • 預貯金証書
  • 登記識別情報通知
  • 不動産の登記事項証明書
  • 名寄せ帳の写し
  • 生命保険や火災保険の証書
  • 株式・有価証券
  • 各種請求書
  • クレジットカードの利用明細
  • 各種契約書
  • 郵便物

相続人がすべてを1箇所ににまとめて保管していたとは限らないため、必要な書類を1つずつ調べることが重要です。

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今回の記事では相続の対象に何が含まれるかについて詳しく解説しました。

相続財産や相続割合に関しては、理解の不一致や手続きの抜け漏れがトラブルにつながる恐れがあるため、専門家への相談が安心・安全です。

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まとめ

相続財産には、プラスだけでなくマイナスの財産も含まれます。

民法上の相続財産や税法上で課税対象になる財産などケースごとに扱いが異なり、知識の正しい理解が求められます。

相続人間のトラブルを防ぐためにも、場合によっては専門家に相談し、必要な手続きを1つずつ進めていきましょう。

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